井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚花組 蘭寿とむ・蘭乃はな・壮一帆の「ファントム」(中村一徳潤色・演出)

<<   作成日時 : 2011/08/14 01:39   >>

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新生花組の「ファントム」を観る(東京宝塚劇場 2011年8月13日ソワレ)

 こんな明るいエリック(ファントム)を観たのは初めてだ! 21世紀のファントムなのだろう
そのおかげでいろいろ考えさせられた。
 
 「ファントム」には、個人的な思い入れがある。

 どこかで書いたとおもうが、もともとわたくしはミュージカルは嫌いであった。
歌入り芝居は、喜びは表現できても人間の苦悩や思想をどこまで表現できるか疑問視していたからだ。

 15,6年前に、ロンドンで「ファントム」を観て、ファントム役の俳優の歌と演技に仰天した。
ファントムの懊悩・決して消えることのない哀しみ苦しみ、それをどこにもぶつけることのできない絶望感。
それらを何とも言えない演技と歌で表現していたからだ。

 以来、外国に行くとミュージカルも時々観ることにしたが、この時の「ファントム」を超える舞台には出会わなかった。

 「ファントム」の原作は未見である。

 原作ミュージカルの潤色版――宝塚の「ファントム』初演(2004年宙組 和央ようか・花總まり・樹里咲穂)はDVDで最近見た。DVDでみても、これは三者が絶妙の関係をうみだしていたから舞台はもっと良かったと思われる。

 DVDと舞台を観て理解したもの――底を流れる哲学は、人間に内包する差別意識、美意識、正常と異常という人が都合よく作りだした概念、ハンディキャップを持つ存在の否定・・・・・等々を再考すべくわたくしたち一人一人に問いかけ、あなたはどうするのかと投げかけている作品だということなのである。

 それゆえクリスティーヌは、可愛く・歌が魅力的で綺麗な声の持ち主であればいい。深く物事を考えない存在であることが重要なのだ。ファントムの悲劇は、そういう少女を愛してしまったことから生まれる。

 そんな少女だからファントムに「顔を見せてほしい」などと簡単に言えて、しかも顔を見たら驚いて逃げだし、それをまた謝りに行くなどという自己満足な行動がとれる。

 蘭乃はなは、そんな単純な少女を好演し、しかも努力のたまものか、歌も以前より上達していた。花總に似せて演じていたような気がしたが、真似から入るのも演技の勉強だから・・・・・今後の成長に期待しよう。もっとも花總は少々哲学的であったように思われるが・・・・

 蘭寿のファントムは、声の質や歌唱法が明るいために、ファントムが抱えている暗さが出にくい。暗さや複雑さを否定する「平成生まれ」の若者には理解されるのだろうが、いにしえの「昭和生まれ」には、どうにも分かりにくい。ダンスの蘭寿は、内面の微妙な動きを表現していたのだから歌でも懊悩が表現されると一段と魅力的なファントムになると思うのだが……如何だろうか・…

 キャリエールの壮一帆は、押さえた演技で好演、舞台に重みを付けていた。壮の持っていた軽さが消え、息子ファントムを一度は捨てたという負い目を内に抱えて、純粋にキャリエールを信じているファントムの未来を心配する父親を表現する。

 この作品は、一幕は単純なところが多く――プリマのカルロッタ(桜一花 熱演)のクリスティーヌ虐めが見せ場、二幕がドラマの真髄で、父と息子の触れ合いが泣かせる場になる。今回も壮と蘭寿がいい場を作り出して、歌も聴きごたえがあった。右隣の女性観客は泣いていたし、左は空席だったがその先の男性客もハンカチを出していた。

 広い舞台を群舞でコロスが踊る場が、何場面かあったが、洒落ていて素敵であった。どこの組も群舞は素晴らしい。宝塚以外でこの素晴らしさは味わえない。質量ともに努力の成果が出る。

 フィナーレも楽しい。

男役ばかりの場面、娘役と蘭寿の場面、蘭寿と蘭乃の場面、壮と男役数人の場面・・・などなど魅力的であった!

 夏美よう(楽屋番)・愛音羽麗(伯爵)・華形ひかる(支配人)・芽吹幸奈(母)などが印象深かった。



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