井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚宙組 大空祐飛の「クラシコ・イタリアーノ」(植田景子作・演出)☆付録あり☆

<<   作成日時 : 2011/11/28 07:01   >>

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大空祐飛の「クラシコ・イタリアーノ」を観る(2011年11月25日 初日東京宝塚劇場)
 このところヒットを飛ばし続けている宙組(組長寿つかさ)が、植田景子の新作を得て、内容の濃い充実した舞台を作り上げた! 大空を筆頭に宙組男役たちの抜群のスーツ姿のカッコよさは、近年にない。俳優志望の男性たち必見

 第二次大戦後、戦火で親を失った戦災孤児はヨーロッパに多く存在した。わたくしたちの国も同様であった。この作品はイタリアが舞台だが、日本に置き換えることもできる。

 その一人、シチリア出身のサルヴァトーレ(大空祐飛)は、息子を戦争で失ったナポリの腕のいいスーツ職人(汝鳥怜)に救われて「ナポリ仕立て」の手縫いスーツ職人に育て上げられる。マリオ(北翔海莉)もペッピーノ(蓮見ゆうや)も同じ仲間だ。

 1960年代の世界経済の成長期に手縫い男性スーツの大衆向け既製服を考えてローマに進出し、イタリア経済の旗手となった。サルヴァトーレは、良質なスーツを金持ちのものではなく大衆にもきて貰いたかったのだ。

 そして今、さらなる市場販路をアメリカ大衆社会へ広げようとしている。アメリカ側のバイヤー(悠未ひろ・鳳樹いち)は、効率のいい機械化を主張し、金の掛る技術を持った職人たちの首切りを要求してくる。それに同調できないサルヴァトーレは、会社の重役や社員たち(寿つかさ・珠洲春希・純矢ちとせ)と機械化を反対する有能な職人たちとの間で悩む。
 
 そういえば職人がレ二―の取材に応える場面があったがとてもいい。光海舞人たちがいい味を出して、サルヴァトーレについて語っている。この場はフィルムで見せるからと言って、実像で見せているのだが、機器を使わないところがクラシコらしくて良かった!

 共に歩んできたマリオは、一人で手縫いの店を開くと出ていく。ナポリ出身夫婦経営のピザ屋(天羽珠紀・美風舞良)で展開する二人の熱い別れがいい。

 他方、かつての恋人でオートクチュールのデザイナー、クラウディア(五峰亜季)は、侯爵(鳳翔大)と結婚、彼の豊かな資金の下で、好きな仕事を続けているが、最近は人気が低下しているという。
二人の歩む道は、資本主義社会における人間の技術(手)と機械と資本の問題、そして「人間の移り気」を提出していて興味深いものがある。

 この主筋に成功者サルヴァトーレを取材に来たアメリカ人の取材班(春風弥里・凰稀かなめ・愛花ちさき・七海ひろき)とナポリの女優志願の娘ミーナ(野々すみ花)がからむ。

 この脇筋の導入は、サルヴァトーレと出会ったミーナとドキュメンタリー・カメラマン、レ二―(凰稀)の自立への意識の覚醒を意図している。儲け役のすみ花は変化が鮮明に出ていたが、難しい役まわりの凰稀は今一つの感がある。

 サルヴァトーレは、結局アメリカ側の無理な要求を呑んだかつての仲間ジャコモ(十輝いりす――大進歩!)に、負ける。そしてローマの店をジュリアーノ(寿)にゆずり、仕立てはペッピーノにまかせたのだろう。ナポリで店を開くことにする。

 しかし彼の選択は決して敗北ではない。

 「Classico―時を越えて残るもの―」(主題歌)を選択したのだ! この主題歌は素晴らしい。大空の魅力的な声で歌う歌詞は、まさに宝塚のこれまでの歴史とこれからの未来を描いているようであった 
 これはかつてもそして今も、わたくしたちに選択を迫られている問題に通底する。
植田景子は、一見地味な内容に見える作品で、未来への重要問題提起をした。
手作りの農業(農薬減少)・木のぬくもりの家・自然の保存・効率より血の通った仕事・血の通った人間関係・血の通った教育・・・などなどが思い浮かぶ。

 そしてなによりも手作り舞台の重視――これはまさに宝塚がこれまで生み出してきたことであった。
俳優の基礎教育の重視・上演舞台の稽古重視・新作主義・再演でも新作に作りかえる姿勢・・・・などなど。
植田景子も大空率いる宙組も美しく温かく、そして問題提起のある見事なヒット作を生み出した!!

 大空の魅力が全ての場面で発揮され、素晴らしいのは言うまでもないし、大空を取り巻くいつもの面々も見事だった。しかもわずかしか登場しない実力あるメンバーやセリフの無い組子に至るまで、充実していて、上り坂の宙組の気迫と熱意を感じさせる完璧な舞台であった。
 これは宙組の組子の個性を重視して、それぞれに役をふって、しかも今回は退団する組子たちにもそれぞれ見せ場を用意するという周到さであった。ながく宝塚の演出にいた植田景子ならではの暖かさで、これも作品に厚みを与えた。

 オープニングの素晴らしさ、スーツ姿の見事さ、上品さなどなどあげればきりがない。是非劇場へ・・・・

 藤井大介の「NICE GUY!!」

 これがまたとてもいい! 宙組の男役娘役のいいところばかりが目につくショーだ。大成功
上品で洒落ていてしかもビートもあり、しばらくぶりで満喫できる。これもヒットだ! 藤井の代表作になるやもしれない。大空の持つ魅力が発揮されて楽しいショーが出現した。まさに大空に飛遊するようだ

 天羽珠紀・美穂圭子・北翔海莉の歌のすばらしさ、
かれらの歌でおどるダンス場面の力強さや品の良さ、鎮魂。
情感あふれるどの場面も優劣がない。どこもダンスも歌もいい。セクシャルナインも素敵・・・

 珠洲の女役姿もなかなかで、悠未と珠洲の最後のダンスも抜群であった! 
藤井大介もなかなか洒落たことをする。

 上り坂の組は何をやってもいいものが出来る。芸術の女神も微笑みたくなるのだろう! 

大空祐飛と宙組の舞台に“ブラボー!”   そして未来に大いなる期待を込めて”乾杯!”



 次はこの組の洒落た燕尾集団が観たい!

付録・・・・宙組異変!!!

 12月に入って組がえが発表された

思いもよらない事で、驚いた!  何人もの人々から、大変大変と連絡がきた。
皆、仰天している。
それは舞台の完成度の高い集団であるからだろう。

ということはこの緻密で格好のいい、洒落た集団が生み出す舞台も雰囲気も
今回で最後らしい・・・ 

 そうなると多くの人に是非舞台を観てほしい・・・と思わざるを得ない。
舞台は、記録されたDVDでは得られないものを提供してくれるからだ。

 舞台の集団は、人が一人変わっても雰囲気が変わり、舞台の仕上がりも変わる。
完成度の高い宙組であるから残念な気持ちもあるが、
ここで育った人たちが別の組で嵐を引き起こすことを期待したいし、
他の組から来る人たちと宙組生とで生み出す新鮮な輝きにも期待したい。

宝塚の全集団の更なる変化と新しい世界の構築を期待することにしよう。100年は目の前だから・・

付録2――2012年1月12日
 「クラシコ・イタリアーノ」が平成23年度文化庁芸術祭演劇部門優秀賞を受賞した!!!

当然だろう、いい舞台だったから・・・個人賞も大空祐飛にあげればいいのにと思うが・・・・・

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