井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 詩集 川上亜紀『三月兎の耳をつけてほんとの話を書くわたし』(思潮社)

<<   作成日時 : 2012/06/10 16:17   >>

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川上亜紀の詩集『三月兎の耳をつけてほんとの話を書くわたし』(2012年5月刊)を読んだ!

 橋本綱の月と兎4匹の表紙絵が楽しげで、ちょっと悲しげで、この詩集を描出、とても洒落ている。

帯に「現実と空想、詩と散文の淡いを往還する」とあるが、月並みだけれどこれはきっと詩人の心象風景!

     それが切ない。

詩は、「モーアシビ」という冊子に発表したものである。

モーアシビとは、沖縄の言語で、〈農村で、夜、若い男女が集落はずれの野原(モー)で遊ぶ(あしび)こと〉だそうだ。

 詩集には14編の詩が収めてある。


 三月兎の耳をつけてほんとの話を書くわたし*と** / 青空に浮かぶトンデモナイ悲しみのこと /
  土星元年 / 十五夜の月の下でほんとの話はまだ続いていく /  【本日のお茶】  
  ある晩、くるみの入ったクッキーを焼いて / スノードロップ / 夏、スズキくんの映像 /
 湖へ行く道 / 真昼 / 正月のフェルメール / 安全ピンと芍薬 / 青海波

 
 ここに収められた詩は、空想のように感じられるが、そうではないだろう。
詩人に実際に起こった出来事をコミカルに自由にあたかも「野原で遊ぶ」がごとく、
ただし一人で・・・・ 遊ばずに 闘っている

 素敵な父親を持つと娘は苦労する。父の理想の男像から抜けられないからだ。
 
こんな風に詩人は書く

  〈ほんとの話をいくつかしたつもりになると
  またそこからほんとの話が枝分かれしていって伸び放題のツル草になる
  でもぜんぶほんとの話だ、これからはもうほんとのことばかり書くんだ〉
 
 そう、ここにはほんとの話が書いてある。

父を失った哀しみからなかなか立ち上がれない詩人。

コミカルに空想のように文字がつづられるから・・・・・ほんとの話と思われない。

言葉が繊細で美しい、そして飛躍が高尚だから   理解されにくい    

 じっくり読んでいると緑色や青色や乳白色の世界が拡がる

 〈サングラスをかけて トンデモナイ悲しみをそっと眺めた (空が眩しいのでよく見えない)〉

 ふきのとうのてんぷらをたべに縄梯子を上がろうとして、途中で折り返す詩人。
 …スノードロップの姫に王子さまをあげようとして・・・・転げ落ちる詩人!!
  
  何と哀しく、そして楽しいことか・…と思う。

 けれども「安全ピンを袖口に入れ芍薬の花を口にくわえてこっそり宙返りの練習をする母!」
 母は『柳生武芸帖』を読んでいたのだ・・・・・・

 詩人の母がほんとに『柳生武芸帖』を読んでいたかどうかはわからない。
しかし忍者まがいの宙返りは、違う存在に変わることを意味する・・・・

 そして最後は〈青海波〉・…きよめ や 厄除け に通じる 二人で踊る舞である。

 素敵な父親の七回忌にふさわしい。  詩人は父の死を 克服して 新しい道を歩きはじめるのだ。

 次の詩集には、必ずや違う世界が拓けることだろう・・・・・・



  最後に、男はいくつもの顔を女にたいして持つ。

 母に見せる顔、恋人に見せる顔、妻に見せる顔、娘に見せる顔・・・・・そして女友達に見せる顔

 みな違う。

 が、一番罪深いのは娘に見せる顔だろう・・・・  ここにはドラマがありすぎるからだ ☆☆

 ハプスブルク王家へ輿入れしたエリザベートは、「パパのようになりたい」と自由を求めてさまよってしまった。

 周知のように・・・大きなドラマが今も繰り広げられている・・・・・




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