井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚星組  「ダンサセレナータ」(正塚晴彦作・演出)「Celebrity」(稲葉太地作・演出)   

<<   作成日時 : 2012/08/04 18:27   >>

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星組の「ダンサ セレナータ」と「Celebrity」を観た(2012年8月2日ソワレ)
 正塚晴彦の作品は、「カナリア」以来だ。
「カナリア」は、壮一帆の好演もありなかなか良かった! 旧作の再演であったから、久しぶりで新作を見る。

 作品自体はなかなか興味深い内容で、しかもダンスの得意な柚希礼音に当てているから、正塚のこれまでの作品と比して更に洒落ていた。
 特にダンスとセリフとで舞台を展開させる場――前景で芝居をし、後ろで男女が組んで踊り――物憂い歌声を響かせて話を動かす場はなかなか素敵であった。正塚は久しぶりで短時間の一つの世界を構築した。

 しかし、どうして正塚は男女の愛を正面から描けないのか・・・・? ここに愛があり、愛に悩む存在が登場するともっといいのだが・・・・・

 こんなことを言うのは、星組に申し訳ないが、もう少し芝居上手の組で再演がみたい!

 ダンスが上手な柚希礼音は、芝居がいつも今一つという感がぬぐえなかったが、過去のある、殺人をしたダンサーのダンスにかける思いと今をどう生きるかという思いとが比較的よく表現されていて、とても成長した。

 ただし、前回のアメリカ映画の役作りが抜けていなくて、立ち姿や動きがすっきりしない・・・・ヨーロッパのダンサーに見えないのだ。これは検討しなければいけないと思う。体がまっすぐに立てないし、妙な癖が出来た。次回作では取り除いてほしいと思う。

 芝居上手が数少ない星組に宙組から十輝いりすがきて幅が出たが、軽い役で気の毒な涼紫央の役をバーテンダーにしないで、副支配人にしてもう少し出番を増やすと、もっと奥が深くなるだろう。

 
 というのは、実は6月15日(昼公演)に宝塚で観ていた。

が、あまりにも低調な舞台であったから、何とも書くのが気の毒で、書けなかったのだ! 
東京は、舞台も締まり、宝塚よりよくなっていた。

 もともと星組は芝居の得意な組ではないから、独立運動や革命などの硬派の話が入るとお手上げの感がする。せっかく宙組から十輝いりすが来て、影のある活動家をそれらしく演じていても周りがそれを受けられなくてついていけない。

 柚希の相手役の夢咲ねねは、スタイルが良くて人気らしいが、どうにも芝居がうまくならない。そして他の若手たち(もしかすると若手ではないのか)の芝居が下手すぎる!

 
 これで卒業する涼紫央など、彼女の魅力が全然出せない役回りで気の毒だ・・・・・しかも「高慢と偏見」をやった演者たちはどこにいるのか・・・・と思うほど皆の演技が拡散し、見えない。


 紅ゆずるは、セリフが一本調子で、語尾が上がり、母音が長く残る。
涼が退団すると重要な存在になるだろうから、演技とは何かを根本から考えなおさなければいけないだろう。
紅も立ち姿が決まらない。

 真風涼帆は、儲け役だが、よく演じていた。セリフもいい。立ち姿も決まる。これから大いに期待できそうな気がした。次が楽しみだ。同様の儲け役早乙女わかばもなかなかいい。

 実は儲け役は、脱線し過ぎて浮ついてもいけないし、硬くなってもいけないから、なかなか難しいのである。二人の若手はよくやっていた。

 新組長・副組長は、気合いが入っていたけれど、組子たちが付いていかれない。

 ショーにはがっかりした。よくない

 前段の芝居がスーツのダンサーで、それで踊るのだから、またスーツばかりでは能がない。
それにセリフを入れたり、遊びを入れているから、前段との違いがでない。セリフなしで、どこまで演出の感性や想いを描出できるかが、ショーーだろうに・・・・・・・

 生徒たちが皆一生懸命であるから余計に残念だ。そういえば暗転で上下にはける時、既に引っ込む前から地に戻っていた人たちがいた。手も足も身体も頭も・・・・皆、薄暗い中で見えるのだ。〈笑〉が緊張感をなくすのだろう。

 紅が脱線し過ぎで、ここは一体どこ? 吉本か? と思ってしまった。

 これは稲葉の責任だろう。巷間のつまらぬ笑いにとらわれてはいけない。
ショー全体が紅色にそまり、柚木や涼が消える。せっかくの涼の場も、柚希の場もかすんでしまった。

 ショーは集団皆の重要な力が集まり、観客の期待も大きい。
レヴューは、セリフがないのが、レヴューだ。ミュージックホールではないのだから・・・・・

 紅にとっても気の毒な舞台だった。コメディーならいいが、〈お笑い〉は宝塚にはいらない。

思えば涼紫央という稀有な宝塚らしいスターは、この星組には水と油だったのかもしれない。

 宝塚は皆、演出家の指示通りに頑張る集団で、それがいい舞台を生み出してきたのである。

 舞台は独立して存在するのではなく、それを観る者は他との比較の中で観ることを、考えなければいけない。

           ☆     ☆    ☆

 この組は、以前上演した小柳奈穂子の芝居のような軽くてたわいない作品、しかし品位のある作品が適している。次回作がその第二作らしいから、あらたな気持ちで取り組んでほしい〜〜〜。

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