井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚雪組 早霧せいなの「双曲線上のカルテ」(渡辺淳一原作、石田昌也脚本・演出、日本青年館)付録あり

<<   作成日時 : 2012/08/10 08:02   >>

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「双曲線上のカルテ」を観る(2012年8月8日初日)

 早霧せいなが「消えてしまいそうな存在感」を表現してとても素晴らしい! 
そして夢乃聖夏と大湖せしるも素敵だ・・・・・ 一見の価値あり・・・・

渡辺淳一の原作は、ベストセラーでテレビでも人気であったらしいが、今からみると嘘っぽ過ぎてどうにも納得できない内容で今更これを上演する目的は何なのか、と思わずにはいられない作品だ。


 つまり<虚>が<真>にならないからである。医師が見ると、見ていられないだろうに・・・・・と思ってしまう。
医療ものと学園ものは、あまりに現実に寄り添っているからやってはいけないのだ。
「ブラック・ジャック」のように全てが虚であれば、可能なのだが…… 

 このつまらない作品をよく、興味を引き付けるものにしたと驚く。 早霧せいなが演じているから観ていられる、と書くとわかるかもしれない。

 「ニジンスキー」から一段と成長して魅力的な男役になった。会場もそれに応えるかのように熱気であふれている。
 皆、ファンはもっといい作品で観たい・・・・と思っているだろうに……  宝塚は本当に酷な所だ!

現代小説は、宝塚のミュージカルに出来るような洒落たものはない。
むしろ清水邦夫の戯曲のような詩的てロマンと絶望が溢れるものをミュージカルにした方が、どんなにいいかと思う・・・・・

 脚本演出の石田もかなり困ったらしいく、コミックな部分を取り入れて暗さばかりの内容を盛り上げている。
装置が、すっきりしていてガラスのような冷たさを表現したり、病院を感じさせて良かった。
 
 末期癌で死がいつ来るかわからない外科医フェルナンド(早霧せいな)と恋人の院長の娘クラリーチェ(大湖せしる――大人の女性を演じて好演)は、暗さを抱えて関係を続けている。

 院長夫妻(夏美よう・五峰亜季――笑いを取る部分を好演)とランベルト(夢乃聖夏――生真面目な青年医師をテンポ良く演じている)、そしてフェルナンドの師の教授(奏乃はると――落ち着いた表現でいい)が作品の厚みをつくる。

 フェルナンドは、新任の看護婦モニカ(星乃あんり)の明るさに惹かれる。これも何だか唐突であまり納得できないところだが・・・・・・

 癌告知の問題、保険医療の限界や非課税世帯が抱える問題、尊厳死と救命医療の問題、等々・…現実にわたくたちが直面している話題が出てくるのも、おざなりでしっくりこない。

 涙を誘うのは、ピザ屋の夫婦(朝風れい・千風カレン――好演)の末期癌とその死へ向かう姿。彼らへの対応が、フェルナンドの医師としての姿勢の一端を示すものとなる。つまり彼がどんなに患者本位の良い医師かということだ。


 渡辺淳一流男性中心の視点の最悪な所は、死ぬことが分かっている男性が子供をつくることだ。
「男のつまらぬロマン」でしかない。死んだ後に我が子が残る・・・!

 しかもこの父系制社会で、婚姻関係のないままに・・・・・・
それを育てる母親の苦労や別の男性との愛などは、「男のロマン」には入っていないからだ。
あたかも戦争に行く前に、あわてて結婚して若い妻を残すのと似ている。
医師も看護婦も、避妊は知っていることだろうに・・・・・古すぎるのである。
こういうものは「男のロマン」ではなく「男の身勝手」という。

 そして既にこれは院長の若き日の恋で、先例がある。

 原作は未見だから、このあたりどうなっているのかわからないが、石田演出は、クラリーチェが骨髄移植をしなければならない病人にし、両親とは適合できない設定をつくる。臓器売買は禁止されているから、ドナーが登場するのを待つか、あるいは兄妹・姉妹の出現を待つ以外ない。

 そして都合のいいことに院長が結婚前に関係のあったアニータ(夢華あみ)との間に男の子アントニーオ(彩凪翔―爽やかに演じている)がいた。

 それをフェルナンドに知らせ、異母兄の彼がクラリーチェと適合して、結果妹を救うことになる。

 このとき、院長の子供・・・・・がヒントになってフェルナンドはモニカをつれて故郷へ帰り、母親に紹介することを考える・・・・・・・などと勝手な推測をして、彼がモニカと関係したことをなっとくしたのだが・・・・・

 もちろんフェルナンドの死後子供は生まれるから、彼は知らない。モニカが勝手に生んだのだ・・・・・・

 最後に天国へ行ったフェルナンドと子供が出会う場面は「トラファルガー」の最後の場面に似ていて・・・・・しかも二番煎じで、出来が悪い・・・・・

 子どもは出さないほうが良かったのではないか・……その方がフェルナンドの死が悲劇的になる・・・・・

 しかし石田は面白くない原作を、よくまとめたと言わざるを得ないし、雪組生たちは、哀しみと笑いをこめた舞台をよくつくりあげたと思う。・・・・・・それで余計に「酷」なのである。

 作品の選択は、よくよく考えてほしいものだ・・・・・・・他の集団に比して演じる側も見る側も大きな想いがかかっている場であるからだ・・・・・・

 フィナーレの、赤の上着をきた男役ばかりのダンス、女役が寄り添うダンス、早霧と大湖の大人の雰囲気を醸し出すデュエットダンス、夢乃が歌い早霧が一人で踊るシーン、早霧と星乃のデュエットなど・・・・・皆、とても洒落ていた。

 若い男役たちも個性的な人たちが多く、これからが楽しみだ。女役たちも麻樹ゆめみ初めみな良くやっていた。

 付録 
8月15日

 ご連絡がありました。

「チギちゃんが可哀そうだから悪い批評は書かないでほしい」・・・・・というご注文でした。

 早霧せいなを批判しているわけではありません。この企画をした制作関係者を批判したのです。

 又、批評は、「かわいそう」とか「素敵」とか、そういうレヴェルでするものでは、ありません。
舞台に表現される戯曲・演出・俳優の表現について、評者に内在する一つの基準に基づいて批評をします。
ですから同じ作品でも批評が異なる場合もあるわけです。

 早霧は素晴らしいスターです。
大空祐飛が退団した今、男と女の境界に生きて表現できる数少ないスターの一人であると思います。
大いに期待をしています。

 期待はしていますが、舞台がよくないときはやはり批判をするでしょう。他のスターたちにもわたくしは、いい時は褒め、よくないときは批判をしています。他の記事を読んで頂ければおわかりと思います。

 どうぞ誤解のないようにお願いします。

 それから次の雪組公演も医者の話とか・・・・聞きました!
 
よくわかりませんが、いい本であることを願わずにはいられません。



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