井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚 宙組凰稀かなめ「風と共に去りぬ」(M・ミッチェル原作、植田紳爾脚本・演出、谷正純演出)

<<   作成日時 : 2013/12/05 08:59   >>

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宙組の「風と共に去りぬ」を観た[2013年11月27日(A)、12月4日(B)]

 凰希かなめのレッド・バトラー、朝夏まなと(A)・七海ひろき(B)のスカーレット、 実咲凛音のメラニー、
  悠未ひろ(A)・朝夏まなと(B)のアシュレイ、寿つかさ・鈴奈沙也のミード夫妻、
     美風舞良のピティーパット、汝鳥怜のマミー、緒月遠麻のベル、
      純矢ちとせ(A)・伶美うらら(B)のスカーレットU、綾瀬あきなのプリシー、
そしてその他宙組生たち


 長編小説の植田脚色の舞台で演じる宙組生たちは、レッドの凰希かなめを支えて、みなその役に熱心に取り組み、芝居も歌も踊りもよかった。

 凰希は、これまでにない役に取り組み、魅力的なレッドを作り出すことに成功。悠未もこれまでになかった二枚目アシュレイを見事に造形していて、退団が本当におしまれる。

 二人のスカーレットは、共にはじけて、明るいわがままスカーレット、目覚めたスカーレットを使い分けていたし、スカーレットの心の声の二人も、よくやっていた。

 マミーやミード夫妻やピティパットは、上手なのが当たり前の宝塚きっての俳優たちだが、若い宙組の作り出す舞台を引き締める役割を見事に果たしていた。

 ベルも、大きすぎて身の処置方に困るのではないかと推測していたが、案に相違してよくやっていた。


 にもかかわらず、この舞台は何かが欠けている。それは何か・・・・・!

 
      脚色が良くないのである。

では、何故に、この本でこれまで何度も再演して、客が入っているのか・・・・・

  それは、スターの力と原作本の力だ!!!  

原作を読んで泣いたり笑ったり、ドキドキした人々がまだ健在であるからだ。

しかしこれからはそうはいかない。
若者は、映画のビビアンリーも原作本も読んだことがないからだ。
   こんな長い本は誰も読まない。

「ル・サンク」を読んで再度確認しようと購入し、家に帰って開いてみて・…ビックリ!  なんと写真ばかりで
脚本の文字がない・・・??    これにも驚きだった。 
   中身を見ずに購入したことを恥じた

 「風と共に去りぬ」は、スカーレットというわがままで高慢で夢ばかり見てあまりお利口ではない少女が、
フト視た凛々しい青年アシュレイに恋をし、自分のものにしたかったのに、
自分より下の女とおもっているメラニーと婚約してしまったことから始まる話だ。

 しかし、この脚本には、それがない。そして同時にアシュレイとメラニイの婚約発表の日にアシュレイに心を打ちあける場もない。それを見たレッドが、スカーレットに恋心を感じる場もない。

 始まりがなく、争いやいじめ、噂などの醜い場ばかりが続くこの舞台では、どんなに俳優たちが頑張っても限界が出てくるのである。ベルばらのフェルゼン編と同じ手法で、非常によくない。

 レッドに惹かれ出すスカーレットの感情を示す場もない。セリフは説明台詞ばかりである。
その結果、舞台を見終わったあとには、この作品の持つ哀しみや強さという余韻が残らない。

 植田紳爾は、菊田一夫が目をかけた劇作家であった。宝塚の中心になる作家に育つと言っていた。
拙著『菊田一夫の仕事 浅草・日比谷・宝塚』に、この辺りの事は書いた。

 たしかにいい舞台もつくってきた。しかしこの作品は、ベルばらのフェルゼン編同様に問題の多い本である。

 スタイルもよく、豪快なレッドを頑張って演じている凰希が気の毒になった。

 もし今後「風と共に去りぬ」を再演するつもりがあるなら、脚本を変えなければならない。

 これを観ながら、先月の花組の「愛と革命の詩」の脚本の素晴らしさを思い出した・・・・・何といい本であったことか・・・・・

 100年を迎える宝塚は、これからも世界に羽ばたいてほしいと願っている。
それにはスターに頼らず、まずいい本を、そして新作を、宝塚のために書かれた本を舞台にのせて、そしてスターを育てていかなければならないと思う。これはファンたちの願いでもあるだろう。

 宝塚は観続けてきたファンがいたから、存在続けることができた。

他の劇場でやっているような、アメリカものミュージカルや二番煎じの再演ばかりでは、こう長くは続かなかっただろう。

    専属の演出家たちが新しい作品を作り続けてきたから、今がある。

 再演をするなら、いい作品を再演することだと、痛切に感じたしだい・・・・・

 時代は変わっている。作品選択には、演劇のプロの目で選んでほしい。

 100年に向けて頑張って欲しいと願わずにはいられない・・・・・・ 

 



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