井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 桐朋学園芸術短期大学二専攻合同公演「天保一二年のシェイクスピア」(井上ひさし作・宮崎真子演出)

<<   作成日時 : 2015/01/31 19:06   >>

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桐朋の専攻科修了公演「天保一二年のシェイクスピ」を観た(栄組―2015年1月30日せんがわ劇場)

 この戯曲は4時間を超える長い多幕物で、シェイクスピア作品が種本だ。

井上ひさしが高踏的新劇に〈語呂合わせ、地口〉という低レベルの笑いで反旗を示したもので、
しかもその内容は猥雑さに溢れ、性的言語が溢れていて、長すぎる戯曲を読むだけでも辟易する。

 どんな形で宮崎真子が学生たちと舞台を作るのか、見る前から非常に興味深く、雪の降る中劇場へ行った。

手際よくカットされて、スピード感あふれた音楽入りのいい舞台が出来上がっていた。
   このスピード感が重要なのである。しかもセリフは明瞭でよくわかり、うたもいい。

 猥雑さもほどほどに整理されて見るものに〈辟易さ〉を与えなかったのもいい。
    妙に色気を出さないほうがいいのだ。

 音楽専攻の学生たちが作曲を担当して舞台を盛り上げている(後藤浩明音楽監督指導)。
演奏だけではなく作曲をしたというのが本当にいい。折角専攻があるのだから、これからも新曲を生み出して、協力体制でいい舞台を生み出してほしいと思った。これは桐朋でしか、出来ないことだ!

 さて、演者たち。オープニングもエンディングも勢いがあり、いい。
前者は、これからどんな芝居が始まるのかと期待を持たせ、エンディングは、皮肉な暗い結末を印象深く際立たせた。

 装置を用いず長方形の枠組み(木枠)6枚で、さまざまな装置を推測させるのも良かった。
せんがわ劇場は奥行きのない劇場だから、余計な装置は不要なのだ。階段(二重)をうまく利用して奥行き感や奈落感を出したのも成功した。

 木枠を動かす学生たちのスピーディで統一のとれた動きもいいし、殺陣も結構決まっていて、驚いた!
 
     卒業する学生たち
 
  石川修平(三世次)、児島彰浩(幕兵衛)、竹本優介(王次)、宮田賢一(茂平太)、守屋慶二(九郎治)、
    石田律子(真岡老婆)、萱沼春菜(お文)、近藤陽子(お里)、お光・おさち(野村梨々子)、
       古川真央(清滝の老婆)

     みな、溌剌として役を十二分に演じ切って見事だった。

      彼らの未来に栄光あれ、と願わずにはいられない。


 一年生たちもいい

     西田雄紀・池之上真菜・牛田さとみ・江黒仁美・佐藤佳奈・椎名慧都
       戸ヶ嵜菜穂・長谷川湧・牧野萌・三浦葵
          
 そして助演の田中美央と谷原広哉が場面を引き締め、深みを作る役目をしていた!

 
 最後に作曲チームと洋楽と和楽器を担当したのは、 
   音楽専攻の安齋裕・黒田就平・野武大誠・池田有輝・杉田文・深沢みなみ・・
      ウィロビー・ケビン(独り紋付袴で舞台下手で三味線と効果音を担当)

 
 井上ひさしは、シェークスピアを利用してダジャレと性的言語を連発させながら、
   悪意ある言葉の魔術で他者を操ってきた三世次の絶頂と凋落をこの戯曲に書きこんだ。

    何よりも怖いところは、言葉を使って他者を貶め、自分と同じ仲間を裏切り、最後に彼らに復讐される。

      これが奈落の底(地獄)に落ちて行く様相を呈しているのである。

  これは魔女の老婆の未来を見据えた予言通りということではなく、
   人を人と思わず、言葉を操り、結句その言葉に裏切られ、愛する女に現実直視を強いられ、
      そして最後に仲間に復讐される、その恐ろしさを描出している。

    因果応報等という次元の問題ではない。冷たい氷のような眼差しがここにはある。

       井上は、観客に問いかけているのである、あんたは・・・どうなのかと・・・・・

  短くカットしたことで、井上ひさしの描こうとしていたことが、浮上した感がある。
      なぜなら井上の戯曲は蛇足が多く、・・・・・だらけるのだ。
             自分でカットできなくてかきこみすぎるから・・・・  

  最後に民衆を演じて熱気を舞台に拡げた学生たち
 若狭舜・遠藤広太・田口準・杉山玄貴・福田航・阿部咲良・稲葉実穂・久保晴奈・長原茉穂・早石実結
   平野葉子・松田裕里佳・三浦亜珠海・森香菜子・森田万貴・渡辺菜摘



   今度は、吉田隆子の未完のオペラ台本「君死にたもうことなかれ」を音楽専攻に作曲してもらって
   見てみたい〜〜〜〜そんな思いが浮かんだ・・・・・

 
 

 

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