井上理恵の演劇時評

アクセスカウンタ

zoom RSS 壁なき演劇センター主催「かもめ」(チェーホフ作・神西清訳・杉山剛志演出構成)集団ア・ラ・プラス公演

<<   作成日時 : 2016/08/04 19:01   >>

トラックバック 0 / コメント 0

チェーホフの「かもめ」を観た(2016年8月2日 下北沢東演パラータ)

面白い「かもめ」の舞台が出現した!! 

 何度「かもめ」を観たか記憶にないほどだが、いつも面白くなかった! 
 だいたいどこもかしこも古すぎたのだ。新しい演出がない・・・・
 
まあ、この作品に限らず、「馬鹿な人々」が登場しすぎて、それも気に入らない。
  その分まさに「喜劇」なのだが、笑えない舞台が多いのだ、日本のチェーホフは・・・・。

それにチェーホフが、女はみんな年齢を重ねると自分より若い女に〈嫉妬する〉
と考えて居る所も気に入らなかった。
その発想は、男が作りだした都合のいい男中心の思考だからで、それに女も乘っている。

若い女に嫉妬しないのが、大人の女だ。

男たちは、「性」の虜で、若い男に「負ける」と思って嫉妬する・・・それも愚かであるが・・・・。

ところが、この作品では、若い男が年上の男に嫉妬する・・・・
 トレープレフ(松田崇)が、母アルカージナ(チェ ヘミ)の恋人トリーゴーリン(西村清孝)に・・・・
 田舎娘の恋人ニーナ(東ケ埼恵美)が名声に憧れて追いかけるからだ・・・・

ここが、チェーホフの、男が持つ二面性を表現した面白いところ・・・・

 この舞台は、まさにその「性」に焦点を当て、登場人物の夢想・幻想・深層心理
  ――チェーホフはそんなことはもちろん書いていない――

 それを象徴的に、抽象的に、具象である俳優が舞台で表現したところが面白い・・・・
  これが演出・構成とした所以。

 舞台を観ていて、ずっと昔に観た鈴木忠志の舞台を思い出した!!!  発想が似ている・・・

 マーシャ(安藤繭子)が、トレープレフを夢想して、椅子でもがいたり、
 ポリーナ(志賀澤子)がドールン(服部晃大)を誘い込んだり、
     ・・・・兎に角〈性〉の幻想に彼らは囚われている。

 極めつけは、池で遊ぶマーシャやアルカージナが、ビキニ姿で、ニーナのビキニに対抗する場面、
 しかし、ビキニは止めた方がいい。チェも東ケ埼も、美しい肉体を持っていることは分かるが、
 (チェの美しい肉体を見せるのが、呼び物であるなら…なおさら止めた方がいい)

  舞台で裸は禁物だ。抽象も幻想も消えてしまうから・・・・「裸」はどこまで行っても「裸」だからだ。
     そこには、何の意味もない。外国では、近年、上半身はだかが多いが、意味が消える・・・

        それにこの場が長すぎた・・・

  面白いのは、トリゴーリンとニーナの三幕の「長いキス」というト書き・・・

 加藤ちかの狭い舞台を有効利用した効果的な装置の中で、影絵で激しく絡み合う・・・・
 ということになってしまい、またこれも「一分」の筈が長い・・・・


 むしろ別の場のマーシャのように薄物をはおり、直接的でないほうがいい。リアルは禁物だ・・・
 象徴や抽象は、観客の想像力を喚起する方法の方がいいのだ。

 そして最後に顔や体を汚して、登場人物が出て来るのも、人生の垢を体中に背負いながら、
それでも生きていかざるを得ない笑える人々・・・・・が表現されていて面白い。

 苦しみを背負いながらも、旅回りの役者として生きていくニーナには、俳優の業が、感じられるのかな?

 どんなに待ってもトリゴーリンは戻っては来ない、男と女は若さや愛で生きているのではないからだ…

 「かもめ」 を登場人物の「性」を基底に据えて新しい舞台を生み出した演出家に大きな拍手を送りたい。

 舞台表現には、もう少し手を入れたり、直したりした方がいいところがある、
とわたくしには思えるが、それはどこまでも感性の違いであるから・・・・と言われればそれまで・・・・

 しかし、この集団の別の舞台を、また見てみたいと思った・・・・期待している

 
 






かもめ・ワーニャ伯父さん/チェーホフ/神西清【2500円以上送料無料】
オンライン書店boox
著者チェーホフ(著) 神西清(訳)出版社新潮社発行年月2004年11月ISBN97841020650

楽天市場 by かもめ・ワーニャ伯父さん/チェーホフ/神西清【2500円以上送料無料】 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

月別リンク

壁なき演劇センター主催「かもめ」(チェーホフ作・神西清訳・杉山剛志演出構成)集団ア・ラ・プラス公演 井上理恵の演劇時評/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる