井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 平幹二郎の「CRESIDA クレシダ」(ニコラス・ライド作、森新太郎演出、シアタートラム公演)

<<   作成日時 : 2016/09/08 12:43   >>

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「クレシダ」を観た(2016年9月7日 ソワレ)

 平幹二郎は観客の期待をいつも裏切らない  素晴らしいことだ!!

平の役(シャンク)は、かつてはロンドン・グローブ座の少年俳優(女役)だった。17世紀の終わりごろに女優が登場するからそれまでは少年が若い娘の役を演じていた。

 シャンクは老いて、劇場付属のの少年俳優養成所から来た少年の演技指導をする教育係。

まさに、経験的にも年齢的にも適していて、若い俳優たちと同じ舞台に立っていても演技力の差が気にならない。

 すでにこの劇場には、今花盛りの娘役のハニー(橋本淳・・・・・これから魅力的な俳優になりそう)、
 端役を勤める少年たちグーフィーとトリッジ(雨水将大・藤木修・・・・頑張っている)。

 そしてやはり元少年俳優で現在は衣裳係のジョン(花王おさむ)、と経営担当のリチャード:ディッキー(高橋修)がいる。
  この二人、現役少年俳優たちとは異なり、大人になった女役の少年俳優の将来を知らせる存在として重要で、
二人はそれぞれ個性を発揮していい。

 俳優になりたくて(実はハリーのファン)一人のボロをまとった貧しい少年スティーヴン(浅利陽介・・・もう少し変化が欲しい)が訪れる。

登場人物の、序列を作ると、

一番上で熟練俳優のシャンク→演技的には指導者にはなれなかった元少年俳優の衣裳係ジョン→
多分理性的だったから少年俳優から経営担当になったと推察されるリチャード→
花形俳優ハリー → 様々な端役を勤めるグーフィートトリッジ → 少年俳優志望のスティーヴン

ということになり、一番下のスティーヴンが花形少年俳優になるまで・・・・・世代交代と言ってしまうと面白くない。

 ロンドンのウエルメイドは、そこで止まらないだろう・・・・と思う。


 この話は、異邦人の訪問から進展していくわけで、その点ではドラマの常套で〈ウエルメイド〉。

 しかし時系列に展開するのでは、あまりにも古めかしいからだろう、
現在時間から一番遠い過去へ遡り、順次話が進んで、現在に戻るという舞台運びになる。

舞台は、平のジャンクが、雲の間のような装置の間にあるベットに横たわっているところから始まる。
 スティーヴンは、既に一人前の少年俳優になっていて美しい服を着ている。


 
 1630年頃が舞台の時間らしい。ということはシェークスピアは死んでいる。
      一応1616年頃死んだことになっているから・・・・

シェークスピアが「トロイラスとクレシダ」を書いたのは1604,5年頃で、「ハムレット」を書いた後と言われているがこれも確証はない。しかもこれは殆ど17世紀中上演されていないといわれている。

 つまりこれを書いたニコラス・ライドは、グローブ座を舞台にシェークスピア上演史にない〈虚〉を描出したのだ。
    何を言いたかったのか・・・・・・

 シャンクは、古い演技教育を受けてきて、長い間それを少年たちに教えていた。
 それは、女でもなく、男でもなく、みずみずしい少年の〈色香〉が醸し出される演技だった。
  ハリーはそれを体現していた。
 だからある一定の年齢が来ると、声変わりもし、身体も男になるからできなくなった。

 しかしシャンクが教えたスティーヴンは、それを学びながら、ハリーとは異なる演技をしたいと考えて、
 新しい演技・・・・・女のような振り・・・・を舞台で演じだ。観客は新しい演技の登場に熱狂する・・・・・

   単なる俳優の世代交代などではなくて、自然らしさへの追求・・・・・
18世紀の市民社会の登場を待つ、本当らしさを志向する観客の要求とスティーヴンの考えた演技がマッチした。

  これはまさに・・・・・演技とは何か・・・・永遠の問いを演者にも観客にも、投げかける芝居なのである

 古典主義の終焉が近いこと、女優の登場がすぐそこまで来ていることを知らせる話であったのだが・・・・

 最後のシャンクのセリフ・・・・女優の登場〜〜云々のセリフのところは、表現が少々大時代的・・・・
  原作を読んでないからどういう事かわからないが、この演技は、検討した方がいい・・・・・・


  いつもなら、平幹二郎と互角に舞台で勝負できる若い人はなかなかいなくて、舞台に風が吹くのだが、
  今回は、設定が指導者と若者ということなので、却って若々しい息吹が感じられ活気もあって良かった。

     花王おさむと高橋ひろしも、舞台を〆めていてとてもいい〜〜〜

 

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