井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 「国際演劇祭 イプセンの現在」…地点(CHITEN)「ヘッダ・ガブラー」(あうるすぽっと)

<<   作成日時 : 2016/11/24 13:28   >>

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地点の「ヘッダ・ガブラー」(イプセン作、毛利三弥訳、三浦基演出・構成)を観た(2016年11月23日 あうるすぽっと)

 単純に驚いた!!!  えっ、ヘッダって、わがまま嬢ちゃんだった・・・・の…!  
                
     というわけなのだが…。  これは舞台をみた正直な感想・・・・

  何しろ舞台には、いろんな材質の形の異なる安楽椅子と子供用の馬(名前を失念)が置いてあり、
 パイプが組んであって、わたくしの嫌いな〈客席に向いた照明〉・・・・

  おなかの大きい召使が、掃除をしている。
  そして奇妙な声で、同じイントネーションで、互いの名前を呼びあうヘッダとテスマン。

    「ヘッダ・ガブラー」の始まりだ。同じリズムで、俳優たちが切れ切れにセリフを発する。
特徴は、次の役にかけるときに、名前の語尾を上げる…・
     これが一定のリズムで、一つの旋律のように流れてくるから…眠気を誘う。

 舞台上のセリフのやり取りは、けたたましいのだが、それでも同じ旋律で・・・・・眠くなるのだ。
  (決して睡眠不足ではなかった…・睡眠誘導剤のごときリズム…が続く)

 エイレルト・レェーヴボルグは、よく動く・・・・動き出すとセリフの調子が写実に代わる・・・・
   テスマンもブラックも同様・・・・
 
 どうやら演技に決まった約束事があるようだった。

そしてヘッダもった拳銃の発せられる音が何度も・・・・ヘッダが拳銃で遊んでいるという表現だろう!

  要するに、これまでにない「ヘッダ・ガブラー」…ヘッダの内面ではなくて演者の単純な表現で
〈ワガママ嬢ちゃん〉ヘッダが登場することになり、舞台表現としての斬新さが描かれていたのである。

   1920年代に〈劇場の三科〉がやってたかもしれない・・・・・とふと思う。

時折座ったばかりのヘッダが足を組みなおし、濃い色のスカートから素足かのごとき(実はちがう…)足が、
組みなおされ、その奥まで見えて・・・・誘い込んでいるような振る舞いがある・・・・

 おそらくヘッダがレェーヴボルグを誘い込んでいる表現なのかもしれない。
    これが演出の視点?  イプセンの視点?   

イプセンは、かなり〈女の性〉にこだわり、男を誘い込む存在とみていた節があるから・・・・
     妥当なのかもしれないが・・・・・

わたくしにはどうにもこのイプセンの視点も演出の視点も、男性特有のものであるように思われる。

    女はいつも〈性〉にとらわれているわけではないからだ・・・・・。

 1時間一寸で終わったからいいようなものの、これが長かったら、勘弁してほしい舞台だった。


   この国際演劇祭の企画委員長の大笹吉雄が、

「最近のイプセン戯曲の演出は(略)演出者が手を加えるのが一般的でだから(略)こういう流れを受けて」
今回の舞台があるということを記していた({IBSEN NOW 2016])。

 確かに、もう10年ぐらい前に、パリで「人形の家」の「手を加え」た舞台をみたが、パリだから、
  セリフで変化させていたように覚えている。 

 構成演出の三浦基について, [IBSEN NOW 2016]でみなもとごろうは、

 「ある英国の演劇研究者に21世紀の日本の演劇人を推薦してくれと頼まれた時に、
    まず挙げたのは彼の名前であった。
 その理由は、
「第一には彼の主宰する劇団「地点」の多くの作品が、西洋演劇にはよく知られた作品であって、
   説明なしに通用すること。
第二には、翻訳劇という概念を超えた独自の視点での作品の仕上がりが、
     これまでの日本的な湿潤とは違う”乾燥”をしめしているからである。」

 たしかに、イプセンもチェーホフもシェークスピアも外国では、皆が筋をよく知っているから、構成しやすい。

    日本ではこの辺りが問題かもしれない。

独自に固有の表現を目的にして構成すると、戯曲の持っていた深い味が確実に消える。
それでもかまわなくて、表現のみが先行しているというのが、外国の現状なのではないかとわたくしはみている。

 イタリアで見た舞台もそうだった・・・・つまりは、新作が書けないのだ。

書けたとしてもたいしたものではなくて・・・困っている・・・・

世界的に社会が行き詰ってしまって、現代社会の中で生まれるべき芸術が成立しない現実があるのだ。

 個別の表現に行くより仕方のない・・・・・・・。 なんという不幸であろうか・・・・・・・

     ・・・・という短絡したわたくしの意見で終わることになってしまった!

 三浦基には、優れた舞台があり、それが「桜のその」と「かもめ」らしい・・・・観に行ってみようと思う。

   ☆    ☆    ☆

 この演劇祭は、12月まで続く。

日本の名取事務所が「人民の敵」毛利三弥台本演出で11月26〜27日にあうるすぽっとである。

ノルウェーの「ヘッダ・ガブラー」が、シアターχで、11月30日、12月1日
日本の雷ストレンジャ−ズ「人民の敵」が、シアターχで、12月3日、4日

ベルギーの「人民の敵」が、シアタートラムで、12月6日、7日
ルーマニアの「ヘッダ・ガブラー」が、シアタートラムで、12月10日、11日

  是非、観に行ってほしい。


  

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