井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚雪組 早霧せいなの「私立探偵 ケイレブ・ハント」(正塚晴彦作・演出、東京宝塚劇場)

<<   作成日時 : 2016/12/08 14:00   >>

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雪組早霧せいなの「ケイレブ・ハント」を観た(2016年12月1日・6日)

 作・演出の正塚晴彦は、宝塚で唯一といっていい現代劇を出す作家だ。

主演の早霧せいなは、仏文学者鹿島茂が〈天才〉と呼んだ(「星逢い一夜」の舞台を観ての発言)優れたスターだ

そのなんでも作り上げてしまう早霧に当てて書くにしても、現代物は難しい。
しかし今回も早霧は、見事に演じていた・・・・・やはり芝居の天才!!!

現代物だと、20世紀の、革命か・戦争か・レジスタンスか、あるいは殺人か・マフィアか・・・・・
そこに少々のロマンスを加えて作る。・・・・・これしかない。


 時代物は、日本も外国も奇想天外、何でもありの世界だから、材料には事欠かない。
その点、舞台では時代物の方が作りやすく、観客にも喜ばれやすい。

 今回は、殺人事件。20世紀半ばのロサンゼルス。映画の都だ。
しかし大スターではなくて名もないエキストラの女優(沙月愛奈)と
メキシコから不法入国してきたその両親(梨花ますみ・鳳翔大・・・・すぐに消えて残念)という、
大して問題になりそうもない地味な殺し!!

 ドラマになりそうな存在ではなく、あえて普通の人の殺人にしたところに、正塚の冒険心を感じた。
アメリカには、こんな殺しは常にある。

 舞台を観て、幕前芝居がなく、広い舞台を十二分に使い、大セリをケイレブの事務所に見立てて上手に使っているのが分かって、とても良かった。

 大人数のメンバーを、このような地味な内容の芝居で生かすために、ダンスでケイレブの心情表現をさせたり、
歌わせたりしているのも好感が持てた。

 残念なのは、私立探偵ケイレブ(早霧せいな)とスタイリストの恋人イヴオンヌ(咲妃みゆ)の誕生日の日の痴話げんか・・・・これはもう少し短くしてほしかった!!!!

 痴話げんかなどを入れるのも正塚には珍しいのではないか・・・ 
   こういう部分を捨てるのが正塚演出かと思っていた・・・・・
 
 たしかに普通の人の関係は、多くが痴話げんかに終始する。それを反映させたのかもしれない・・・・

    現代物舞台の構成は、伏線も上手に張り、さすが正塚・・・・・うまくできている。

 ケイレブの共同経営者ジム(望海風斗)・カズノ(彩風咲奈)、そして事務所で働く人たち(早花まこ・真那春人・桃花ひな・縣千)のチームワークが手堅くていい。真那春人が戻ってきた桃花に好意を持っている様子を示すなどして好演、これから期待できる。

 同様に、管理人(舞咲りん)と映画監督(奏乃はると)が、舞台を締めていて、いい。

 殺人は、マフィアでプロダクションのオーナー、マクシミリアン(月城かなと・・・すっかりスターになった!!)が
裏で関係していたことから、話がドンドン進む。

 ここにケイレブの戦友ナイジェル(香綾しずる・・・・毎回役により演技を生み出して見事だ)が
  ケイレブを救う存在として登場。

刑事ホレイショ―(彩凪翔・・・アメリカの刑事がなかなかいい)はケイレブとマクシミリアンを追求・・・

 事件は最後には解決する。(事件の内容には触れない・・・・楽しみが減るといけないから)

 ギクシャクしていたケイレブとイヴォンヌが、元のさやに納まるのも予想外だった。

仕事に燃えてパリに行くというイヴォンヌを追って飛行場にきたケイレブの熱い思いに負けるイヴォンヌ。

パリに行かない選択ではなくて、帰国を待っていると送り出して、ケイレブが一人で銀橋を渡る方が、
なんとなくハードボイルドではないか・・・・

 それに働く女性の自立心も伺えて期待できるのに・・・・・と勝手に思う。

 ハッピーエンドは・・・ なんとなく、正塚らしくない気がしたしだいだ・・・


 休憩時間に団体で来ていた男女の高校生が「かっこいい〜〜〜」と大騒ぎで話していた。
     若い子供には男役のカッコよさは素敵に映るはずだ。

 テレビを見ている若い子にはハッピーエンドがいいのかもしれないが・・・・

 宝塚は高校生にこそ見せるべき…と痛感。
若いときに良質の舞台を観ておくと、芸術に向かう精神が作られるから・・・・

   これからも是非団体さんは高校生を・・・・・期待したい・・・

 ショーは、楽しい(稲葉大地作・演出) Greatest Hits

   それぞれのスターたちが十分に場面を貰い、楽しそうに演じている。
ゴーストバスターズなども観客は喜んでいたし、美しすぎるトナカイさんやサンタさんも
     クリスマス気分にもなって観客は大喜びだった。

 燕尾の場面が素敵であった・・・・洒落ている・・・・・   

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