井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚花組 明日海りお主演「金色の砂漠」(上田久美子作・演出)

<<   作成日時 : 2016/12/11 20:05   >>

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上田久美子の新作「金色の砂漠」を明日海りお主演で観た(2016年12月2日マチネ 宝塚大劇場)

  上田久美子が明日海りおに当てて初めて書いた〈古の砂漠の国の話〉は、
   思いもよらぬ世界が拡がり、雄々しく美しく哀れな物語になって、大成功だ!

 宝塚には女性作家・演出家第一号の植田景子の後を追うように小柳奈穂子・上田久美子と続いて、
   三人三様の世界を生み出している。彼女たちは宝塚の輝ける星といっていいだろう!!
   男性劇作家の多い中で、女性劇作家の活躍は勇気を貰えて、嬉しい・・・・

  前回の雪組の大成功があったから、今回の舞台を心待ちにしていた観客は多い。

  架空の砂漠の国、つまり時代物である。そのためあらゆるアイディアを盛り込める。
      よくぞこのような話を考え出したものと思った。
   
    変わった話だから種明かしにならぬ程度に筋を記そう。

  ドラマはある不思議な砂漠の国イスファン国でおこる悲劇だ。

この国では、王家に王子が生まれると、同じ年頃の女児の奴隷が付き、
     姫が生まれると同じような男児の奴隷が付いて
  共に育ち、大きくなると奴隷は主人の身の回りの世話をする、同時に王子や姫を守るという決まりがあった。

当然にも、子供同士は幼友達のような懐かしさが、長じるとほのかな恋心が可能になる。

  このイスファン国の現在の王ジャハンギール(鳳月杏―勇ましく恰好がいい)は、先王を殺して王になった。
  ジャハンギールは、美しい先王の妻アムダリヤ(仙名彩世ー上品で美しい王妃)を妻にした。

  これはギリシャ悲劇などにはよくある話だ。で、その後はシェークスピアが「ハムレット」でこのシチュエーション    を使っている。

  が、「ハムレット」と異なるのは、ジャハンギールは、民を慈しむ良き王で、王妃との関係も良好であることだ。
 
 先王とアムダリヤの間には、二人の男の乳のみ児がいた。彼らは人知れずどこかにやられた。
  これも「ハムレット」とは異なる。

  王と王妃の間には三人の姫が生まれた。三人とも美しい。(実は第一姫は先妻の子、第二第三は側室の子)
第一王女タルハーミネ(花乃まりあ―気の強い姫)には、ギイ(明日海りお―いつもながら見事にこの役の世界を描出)という奴隷が、第二王女ビルマーヤ(桜咲彩花―上品で穏やかな姫)には、ジャー(芹香斗亜ーストーリーテラーの役も兼ね、心穏やかな役を好演)、第三王女シャラデハ(音くり寿―わがままでおきゃんな姫)には、プリー(瀬戸かずや―ひょうきんで勇ましく反抗心のある奴隷を好演)がいた。

  三者三様の関係が姫と奴隷の間にはある。

 年頃になり、婿候補が来る。タルハーミネには王子テオドロス(柚香光−政治的で勇ましい王子を好演)が、選ばれる。タルハーミネとギイの関係が壊れ始める。互いが心の中を正直に表現するか否か、迫られるのである。

ビルマーヤには、ちょっと太っていて見た目はよくないが、心優しいゴラ-ズ(天真みちる―とてもいい。抜群の表現力)が、候補者になる。
 
  このそれぞれの関係が実にうまく描出されていた。

   そのあとは、ご覧になっていただきたいが、一言いえば・・・・・

ギイがどんな人生を選択して、最後は姫と砂漠の砂になるのか・・・・・このあたりの展開は実に上手。
.
他に先王の家来だった集団が、砂漠にはいて、
  それを花野じゅりあ・舞月なぎさ・和海しょう・冴華りおな・水美舞斗等が、かっこよく登場する。

 このあたりの人物造形にも上田久美子の構成力を感じる。

   英真なおき・高翔みず希が、要所要所で舞台を締めている。  是非、一見を進めたい。



 日本物ショー 「雪華抄」(作・演出原田諒)も素晴らしい!
  
   日本の伝統的な歌は、誠にバラエティーに富んでいて、演劇的だといつも思う。
   それをうまく使って四季折々を力強く構成していた。

   始まりの銀橋のチョンパも素敵で、宝塚ならではの見せ場。これはどこの集団にもできない場面だ。

   上品に始まり、楽しく勇ましく、そして雄々しく、怪しく、哀しく…・・場面が動くところが見事であった。

   演じる人たちも楽し気に踊っているので、観客もウキウキする。

    松本悠里は、年を取らないのではないかと思うくらい、みずみずしく美しい。

  男優には決してまねのできない麗しい姿で舞っていた。

    皆が美しく熱心に演じているから、観客にもそれが伝わる。


 特に今回は、日本物のショーが最初で、後に芝居が来るから・・・・これがまた余韻を残すのにとてもよかった。

  芝居の後に付いたショーも、砂漠の国の物語に続くようで美しい。

   いつもながら燕尾がまた一段と洒落ていた。

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