井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 野田秀樹の新作「足跡姫 時代錯誤冬幽霊」(宮沢りえ・妻夫木聡・古田新太・中村扇雀他)

<<   作成日時 : 2017/01/22 10:41   >>

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野田秀樹の中村勘三郎へのオマージュ「足跡姫 時代錯誤冬幽霊」を観た(2017年1月19日東京芸術劇場プレイハウス)

 野田秀樹の気持ちはよくわかるが、どうにも出来がよくない 

野田の観客には、意味もなく大声を出して笑う客がいて、たまたま近くの席にそういう人がいたために
いい迷惑であった・・・・・わたくしからすれば、全然面白くない…・のだが・・・・何故、笑う???


 野田秀樹は、出来が良くないときは序幕・・・・というか二幕形式だから一幕・・・・の出来がいつも悪い。
  今回も同様で、もう少し整理した方がいい・・・・入れ込みすぎるのではないか・・?(台本未見)

 芝居が、序幕で左右されるのは、古今東西を問わず…で、実はここが一番難しい。

 今回も相変わらずのダジャレと下ネタの続発で、それで無駄な笑いが起こるのだろう。


 出雲阿国に似せた女歌舞伎のスター(宮沢りえ)とその弟の作家(妻夫木聡)が、

 女歌舞伎を取り締まりでなくそうとする権力…役人(扇雀)の裏をかきながら、

本物のかぶきを求める話で・・・・そこになぜか幕府転覆をはかった油井(由井)正雪(古田新太)がからむ。

 宮沢も妻夫木もセリフは明瞭であるが、古田は相変わらず活舌が悪くよくわからない。

 野田も同様なのだが、死人の腑分けをする科学者(?)として登場する・・・・

 お城へ通じる穴を掘る弟と、由井の幕府転覆がつながるらしいが、どうにも意味不明。
 意味不明は、野田の芝居にはおおいが、もうそろそろ〈意味深く〉してほしい・・・・・

確かに勘三郎は「天日坊」という吉田の家を乗っ取る坊主を演じていて、それが最後の舞台であったから、
そんなところに引っ掛けたのかもしれない・・・・・・が・・・・・

 その吉田のお家乗っ取りは、前日に観た演舞場の近松作「雙生隅田川」の話に通じる。

 野田の舞台の幕開きに、出演者の揃い踏み(全員の足踏み)があった!
たまたま前日の右團次の七郎天狗とカラス天狗の見事な揃い踏み(足踏み)を見てしまったために、
 体幹が揺れてしまう女役者やその他の俳優たちの足踏みが、見事に見えなかった・・・・・

 野田の意図では、全員の足踏みは、圧巻で客を芝居に惹きつけるのに絶好の幕開きであったろうが・・・・
 そう思えなくて・・・・・

 足踏みは、霊鎮めに通じるから、演劇の根幹に存在し、荒ぶる心を癒すものになる。
 勘三郎の御霊を癒す意図があったのかもしれない・・・・・

 女役者たちのストリップまがいの動きも、あまりいただけなかった。

 歌舞伎の祖といわれる出雲阿国はストリップをしていたのではない。

 姉のスター役者が弟の作家に、皮膚と骨の間の何か、そんな芝居を・・・・云々と言っていたのは
「虚実皮膜の間」を描くということを意味するのだろうが・・・・・どうも伝わりにくいように思われた。

 二幕の最後で、足跡姫に乗り移られている女歌舞伎のスターが死ぬときに、
猿若座は永遠、18代まで・・・云々・・・と弟役の妻夫木が勘三郎へのセリフを語りかける…・・・・・
 最後の妻夫木のセリフは、なかなかきかせていた。

 「虚実皮膜の間」の芝居、〈劇〉そして〈演技〉とは・・・・に的を絞った方がよかったように思ったが、
   そうしないのが野田秀樹なのだろう。

   ☆     ☆

 『芸劇 BUZZ』(劇場に置いてある冊子)で、勘三郎の葬儀に三津五郎が、

 〈「肉体の芸術ってつらいね。死んじゃったあとは何も残らないもんな」とおっしゃった〉と野田が話していた。

 歌舞伎の芸は、それを真似から入って受け継ぐ人がいる。
だから芝居を観ていて、「あっ、歌右衛門だ。幸四郎だ。松緑だ・・・・。猿之助だ・・・。」
と感じられ、懐かしく思い、同時に今目の前にいる人が、新たに開き咲かせる華に夢中になる。
 そういうものではないだろうか・・・・・・・・・

 「あっ、勘三郎・・・・・だ」と思えるような役者が出てこなければならない・・・・

 18代勘三郎は、受け継いだ芸と共に、新しい時代に生きる歌舞伎役者としての舞台を拓くのに力を尽くした。
それを定着させるのは、勘三郎の芸を受け継ごうとする若い歌舞伎役者たちだろうと思う。

 友人だった野田は、独自の感性で、勘三郎の精神を受け取ればいいのではないだろうか・・・・と思った。


 勘三郎へのオマージュを、舞台で表現しようとした演劇人野田秀樹に敬意を表したい。
 何よりも勘三郎は喜んでいるだろう・・・・・・彼の地で・・・・・・・

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