井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 〈「風」と「虹」のクロニクル〉 桐山襲作・三浦剛脚色・越光照文演出

<<   作成日時 : 2017/02/02 19:28   >>

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桐朋学園芸術短期大学二専攻合同公演〈「風」と「虹」のクロニクル〉を観た!
(2017年1月27日 せんがわ劇場)


 桐山襲の名前を目にするのは、久しぶりだった!

 ドラマが始まると、劇場の空気が、何だか澄んで来たような気がした・・・・
     ・・・それはわたくしのロマンだったのかもしれない・・・・・

  1968年から1974年のどこかで、大学生だった若者たちは、あの頃
  自らの青春に、〈どう生きたらいいのか〉 を問い続けていた・・・・・・・と思う。

 同じころ早大にいた三田誠広は、この時期の学生たちのことを次のように表現している。

 「エゴイズムの殻に閉じこもり、自分の幸福のことだけを考えるというのは、
   恥ずべき態度だ、という価値観が、若者たちの常識になっていた。

  ただ世界について考えるだけでなく、世界に向けて一歩を踏み出していく。
 自分という一個の人間が、世界とどう関われるか。世界に対して、自分は何ができるか。
 そういうことを、当時の学生は真剣に考えていたのだ。」
(「『全共闘』の時代を考える」)

  
 「風のクロニクル」や「虹のクロニクル」に登場する大学生たちは、そういう現実に生きていた。

  もちろんそれはバリケードの中にいた若者たちだけではなくて、
   バリケードの外にいた若者にも、
  もっと遠くにいてプラプラしていた若者たちにも、それはあった
  ・・・・そういう時代だった.

(追記 2017年2月7日)
…もう一人思い出した。歌人の道浦母都子だ! 
こんな歌を詠んでいた。彼女はバリケードの中に、そして街頭にいた。

 ―迫りくる楯怯えつつ確かめている私の実在
 ―催涙ガス避けんと密かに持ち来たるレモンが胸で不意に匂えり  (「無援の抒情」より)

    

  つまり今回の舞台に立つ若者たちと同じ年頃の、  
 何十年も前の若者たち共通の体験・感性があったのだ。


演出の越光は、ロマンティクと思われようと構わない、そんな時代の若者の思いを、
   21世紀の学生たちに感じ取ってもらいたかったのだと思う。

学生たちは、演出者のそうした思いに応えて、ノビノビと彼らの苦悩や喜びや決意を演じていた・・・・

  

 ☆「風のクロニクル」は、
  六十代になったかつての若者男女が、1968年を振り返ることから始まる。

越光演出は、長方形の箱を積み上げた舞台の真ん中から一人一人がその箱を取り、
舞台のそでに並べていき、ドラマが始まる方法を、今回も取った。

  これは「虹のクロニクル」でも用いられている。

  両者ともに最後は、未来に向かって走るのだ・・・これがとてもいい

 客席から見ていると舞台に積み上げられた箱、それは、沢山の墓標のようにみえた。

 新入生が、サークルに入り、自分の問題として運動に関わり、バリケードの中へ・・・・・そして・・・・・敗れる

 詳細は、桐山襲の本を手にしてもらい、是非、熱い時代の若者たちの存在を知ってもらうことにしたい・・・・

 「風」の学生たち・・・・
岡田の妻の久湊藍、夏川の石川湖太朗、岡田の遠藤広太、
杉村の児安俊重、先輩Aの田口準、先輩Bの山本祐路、ママの清水透湖、橘素子の野寄由莉、
60代の男の松田健太郎、60代の女の小黒沙耶、乞食の家紋健太朗
  
  「風」は、一年生が多かった。若者や年齢が上の難しい役どころも、皆、巧くに演じていて感動的であった。
  
  脇を固めた演劇専攻一年の学生たちも、あの時代の学生を精一杯演じていたように見受けられた。


 ☆「虹のクロニクル」は、
   最後のエピローグを書かずに桐山が逝った作品だった。
 バリケード後の、若者たちの姿だ・・・・
    
越光と三浦が、そのエンディングに希望を託していたのが、救われる・・・・

「やまない雨はない。雨のあとには虹が見える。私は確かめたい、その、虹のゆくさきを・・・・・」
 (まり子のセリフ)

「爆弾魔」と呼ばれた若者のドラマ・・・・・しかし彼らの願いは、達成されなかった・・・・

「虹」は、題材そのものがドラマティックであるから、演者たちはかなり力が入っていたように思う。

  大道寺はいう。
 「我々の敵は人間じゃない、思想だよ。間違った思想が人間を腐らせる。
  その腐敗に対してどうするべきか・・・・・それがたたかいさ」

  思想とのたたかいは、困難だ・・・・

 彼らは皆、逮捕され、1987年に死刑の宣告を受け、今も獄中にいる。

 一人、釈放された大道寺あや子は、今、どこにいるのか・・・・・・

  詳細は、これも桐山の本を・・・・・手にしてほしい。

  「虹」の学生たち・・・・
片岡利明の大澤宝弘、大道寺将司の松本征樹、大道寺あや子の亀井奈緒、
荒井まり子の杉山果穂、荒井なほ子の久湊藍、ハラボジの家紋健太朗

  卒業する学生たちが主の「虹」は、見ごたえのある舞台であった。
      彼らの今後に期待したい


  そして音楽は、「風」も「虹」も、ヴァイオリンの豊田泰子、ギターの深沢みなみ

   なお、助演の家紋健太朗は、卒業生で日本時代劇研究所所属

   キーボードの高畠愛、フルートの津崎このみも音楽家の卒業生
 

 


 

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