井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 劇団民藝「野の花ものがたり」(徳永進『野の花通信』より。ふたくちつよし作・中島裕一郎演出)

<<   作成日時 : 2017/02/11 22:33   >>

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民藝の「野の花ものがたり」を観た(2017年2月10日 紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA)

 いつの間にか紀伊國屋書店がニトリになっていて、驚いて階上へ向かう。

 本屋はやっぱり大変なんだ!! 日本の社会はどうなるのか・・・・そんなこと考えながら・・・・・


 舞台の世界は、別世界だった!!  鳥取市にある野の花診療所の徳永医師のホスピスが舞台。

 民藝のベテランと中堅・若手の俳優たちがもの静かに明るく淡々と診療所の日常を告げていく。

徳丸先生(杉本孝次)が、客席に語り掛ける。筋は『野の花通信』にある話が展開する。
看護師たち(大越弥生、加塩まり亜、藤巻るも…それぞれの立場をしっかり演じて)、

ボランティアで花を挿しに来る時枝(白石珠江…この人にはいつも驚く、いい芝居をする)も
ホールを磨く孝市(和田啓作)も、病人だった。前者は癌・後者は肝臓・・・・
これはあとでわかる。この辺り上手に作っていた。


患者は、みな癌の末期・・・・

患者と家族のかかわり方が順々に告げられ、途中で時々徳丸の独白が入る。

こういう展開だからテンポが一定で、はじめはほとんど眠気を誘う…・この辺り、演出に一工夫あるといい。
題材が題材だから、いやでも観客に涙を誘うので、ヒロイックにならず、じめじめせず、徳永医師の診療所のように舞台が明るく動いていたのは、いいが、調子がすべて同じで・・・・これが難点だ!


 登場する患者は、年齢順におそらく70代、60代、40代、30代と出てくる。

山奥の患者老女ユイ(箕浦康子)と夫(安田正利)

我儘親父室田(松田史郎)とその娘(桜井明美)、別れた妻(野田香保里) 

薬の開発をしている翔平(横島亘)、その妻(新澤泉)
 
若い独身会社員松永(みやざこ夏穂)、その妹靖代(飯野遠)

 患者たちが、登場してから順次態度や様態が変わり、
   夏の花火大会まで残っているのは松永と時枝だけ。

 死んでいく大仰な場面が出だらどうしようかとおもっていたが、なかった。ホッ・・・・
  あまりにもお涙〜〜〜頂戴で、そんな場面はこまるのだ・・・・・

しかしベッドを片付ける看護師の淡々とした姿は、寂寥感を与え、
わたくしたちにいずれは訪れる「死」を強く感じさせる。

今、世界はどうなるのか、というよりもこの日本という国が、どこまで行ってしまうのか、
恐ろしい状態に置かれているのを感じていると、

 一人一人の人間の「死」が、こんなにも大事にされているのは、噓のようで・・・・・
でもこれが実際にあるというのは、何と救われることかと思ってしまう。

誰もが、こんな風に自然に暖かく囲まれて「死」を迎えたい、そうできたらどんなにいいだろう!

 しかし他者を殺しに行く人たちや、自身が殺される人たちが、確実に存在して・・・
そこにある「死」はみじめだ・・・・自然ではない・・・・暖かくもない・・・誰にも囲まれない・・・・


 わたくしたちは、生まれた時から自らの「死」に向かって進んでいる。
しかしそこに行くまでの時間を、たしかに・自由に・幸せに・・・生きていたいのだ。

 そうするために、今、わたくしたちはどう生きればいいのか、そんなことを考えさせてくれた舞台だった!!

最後に、今回のプログラム「民藝の仲間399号」がとてもいい!!

 執筆者:ふたくちつよし・中島裕一郎・徳永進と河野孝・中村桂子・竹之内裕文・高草木光一



 

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