井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 劇団文学座「食いしん坊万歳!」(瀬戸口郁作・西川信廣演出、文学座創立80周年記念)

<<   作成日時 : 2017/03/04 12:05   >>

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正岡子規青春狂詩曲(らぶそてい)「食いしん坊万歳!」を観た(2017年2月23日紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA)

 この公演は既に大新聞で絶賛された・・・・・ しかしどうにも同調できない気がする・・・・・・

 正岡子規とその家族については、2015年に劇団民藝が小幡欣治作「根岸庵律女」(丹野演出・中地美佐子・奈良岡朋子主演)で上演した。(このブログにup済み)
 これはしっかり者の妹律とおっとりした母とが主で、寝たきりの子規を以下に助けたかに主眼があった。
その意味では三人家族の動態が主になるのは必然だった。

 今回の「食いしん坊万歳!」は、文字通り元気な子規・病魔をおして活動する子規・寝たきりになった子規と、
いわゆる半一代記風な台本で、つまりは子規そのものが主である。
しかし台本の進め方は表層的行動を追うのみで、俳人子規の深層に迫り、彼の思想を表現していないから、
テレビの有名人を扱った物語のようで、その分戯曲に深さも新しさも全くなかった。

 例えば宮本研が「明治の柩」で表現したような、
田中正造の〈生きた道〉〈生きた思想〉が浮かび出てこないのである。

 テレビや商業演劇(新派を含む)で描出する俳人子規ではない子規像を、少なくとも文学座は提出しなければならなかったのではないだろうか・・・・

 一番重要な子規の写生――明治の文壇を自然主義に導いたといってもいいその姿勢が、西洋画科中村不折の「写生」をヒントにして単純に生まれたわけではないから、このあたりの伏線も事前に用意すべきで、やはり台本に難がある。 

 俳優たちは、新橋耐子の母、佐川和正の子規(何だか肺結核という病気になりそうにもない子規だったが)、吉野美沙の妹律をはじめ、皆がそつなくこなしているからぶたいにほころびがみえないのだが・・・・・。

 本が、俳優の力を借りるようになっては、歌舞伎になるのではないか・・・・????

 もう少し台本に力を入れてほしかった・・・・・のである。

新劇は、亡びたとか、終わりだとかいう人々もいるが、立派に一ジャンルとして、ふるくなったものの、日本の演劇の歴史を切り開いてきた現代劇のジャンルである。

文学座は、民藝や俳優座・・・それに頑張っている文化座とかも・・・・先頭を切って走ってきた歴史があるのだから、台本を選んで、いい舞台を生み出してほしい。過去にとどまっていては、未来は開けない・・・・・

 いい俳優が多いのだから、商業ベースに乗らない世界で進んでほしいと思う・・・・

 遺産になっては、終わりだ。生きていなければ演劇ではない・・・・・

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