井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚 雪組 早霧せいな・咲妃みゆ卒業公演「幕末太陽傳」(小柳奈穂子脚本・演出 宝塚大劇場)

<<   作成日時 : 2017/05/07 13:29   >>

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早霧せいなの「幕末太陽傳」を観る(2017年5月5日 宝塚大劇場)

雪組のカンパニーは全開、見事な華が開いて品川宿土蔵相模屋に訪れる幕末の人間模様を展開!!

小柳奈穂子の脚色・演出は、既に原作(映画・川島雄三作品)を超えて一つの宇宙を生み出していた。

  (台本未見) 


台本に骨を付けて血肉を通わせ洒脱でモダン、しかも品よくまとめ、

立派なコメディに仕上げた早霧・咲妃・鳳翔大・香綾しずるをはじめとする雪組生に

大きな拍手を送りたい   (プロの舞台人に是非見て貰いたいものだ・・・・)


 早霧せいなは、新作ばかり大劇場で生み出した稀有なスターだった。

悲劇もコメディーもこなせるスターは、ざらにはいない。やはり〈天才〉なのだろう・・・・・

悲劇に比べコメディは軽く見られがちだが、さらりと演じるのは至難の業で、

早霧の一挙手一投足、セリフ回し、踊り等々をみていて、つくづく感嘆した。

小柳の演出力にも頭が下がる。早霧が退団するのは、誠に惜しい・・・・
 
 (言いにくいことだが、外の世界は宝塚のようなプロ集団の舞台は作れない。)


相手役の咲妃もあらたな面をみせて、軽妙にモダンに演じていて、
芝居心が多分にあるスターに成長したことを示していた。

貸本屋の金ちゃんの鳳翔大も、あの美しい姿で、軽々と三枚目をやっていて、それが逆説的でおもしろい。

長州藩の鬼島の香綾しずるはいつもながら巧い! 

相模屋の面々、主人夫婦(梨花ますみ・奏乃はると)、やり手(舞咲りん)も手堅く脇を固めて、厚みを作る。

こはるの星乃あんりが、立派に大人の娘役になっていたし、
相模屋の息子の彩風咲奈が、今回は頼りないナヨナヨ息子で笑わせる。

しっかり者の女中(真彩希帆)とばく好きの父親(真那春人)、岡っ引の久城あす、使用人たちや芸者衆、客たち等々、相模屋の雰囲気を出すのにニギニギしく一役買っていた。
 

 実は居残っているのは、長州藩の高杉晋作(望海風斗)たちで、生真面目な役の彩凪翔、急進派のキラ羽レオ・縣千等々、早霧退団後の雪組を背負わなければならないスターたちも、いい味を出す。

 映画「幕末太陽傳」は、名画座で見た気がするが、忘れている。したがってどのような結末なのかわからない。

   映画と違うなどという人もいるようだが、比較する必要は全くない。

 これは小柳と早霧たち雪組が作り出した「幕末太陽傳」で、別の芸術作品なのだ。

佐平次(早霧)は胸を病んでいた。

横浜寄留地の外国人ヘボン先生が調合した新薬を飲んで、空気の美味しい品川に養生をしに来た設定。

彼は、実は死にに来ていたのだ。

が、明るくノー天気に生きる品川宿の人々に接し、未来の社会を生み出そうとする長州藩の若者に接し・・・・
(昔は、長州も希望にあふれていたのに…今の長州にはガッカリだが・・・・

品川から一歩も外に出たことのないおそめ(咲妃)が、違う世界が見たいという希望を持っているのを知り、

佐平次は生きようと思う。

自らの再生を期してヘボン先生について未知の国アメリカへ行こうという気持ちになる。

もちろん小柳が、早霧と咲妃の新たな旅立ちに引っ掛けたのであろうが、

ここには未来への展望がある。

そこに待っているのは、明るいか暗いかはわからない。

しかし未来の展望がほとんど閉ざされたような〈格差社会に生きる若者たち〉が多い現在、

未来への希望を持とうという二人の姿は、エールを送っているようで、とてもうれしい〜〜〜

  いい舞台であった。多くの人に是非見てほしいと思っている。 


 ショー「Dramatic ”S”!」(中村一徳作・演出)


  こちらのショーは、初舞台生のお披露目が付く。
 
 これまでにないいいショーであった! スターたち一人一人に気配りをして、ファンが見たいと思うようなダンスや歌をふんだんに盛り込んで、こんなに踊って歌って大丈夫かと思うほど、
   
  皆の気力や迫力が伝わってくる。

 どの場も素晴らしい〜〜〜 本当に雪組はスターぞろいだ・・・!

そして103期生のロケット。

これもこれまでにない難しいもので、しかもかわいらしく、美しい。そしてよく揃っていた。

 彼女たちの未来に栄光あれと願わずにはいられない。


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