井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 東京芸術座「父を騙す」(安保健原案、北原章彦脚本・演出)

<<   作成日時 : 2017/08/18 11:50   >>

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「父を騙す」を観た(2017年8月15日 新宿紀伊國屋ホール)


 敗戦記念日に人間魚雷の舞台を観て、複雑な思いだった!

たしか井上ひさしにもこの題材を使った戯曲があった。

空を飛ぶ特攻隊の方は有名(?)だが、海に沈んで死んでいった「回天」のことはあまり知られていない。

今、再び戦争を始めることができる国にしようとする為政者の元でわたくしたちは不安な日々を過ごしている。
まことに時宜を得た上演だ。

しかし、舞台はどうにも古い・・・・おそい・・・・・

幕開き、エリザベートの黒天使の如き、赤悪魔が出てきたときは、――おそらく亡霊だろうが――
おや!! 村山知義??? とこれから先の舞台の展開を期待した。

が、横田一家の家庭の場面になって・・・・それが消えた。

写実的過ぎて、テンポが遅すぎて、無駄なセリフが多すぎて・・・・・・無駄な動きが多すぎて・・・・

折角の主題が間延びする。

座付き作者で演出家だから、俳優たちに場面をあげようという気持ちはわかるが・・・・それが裏目に出た。

若い青年を弾丸に見立てて、わたくしたちの国は、為政者は、軍人は、多くの人の未来を奪った!
大衆がそれに迎合したと言って、大衆を責めることはできない。
国家は、国を動かした為政者は、国民を迎合するように教育し、育てたのだから・・・・。

一握りの人たちが反対しても、それを多数が抹殺して、殺した。

 
 わたくしたちの国の演劇は、いつも翻訳劇が主流だ。
ドイツのナチを扱った戯曲は、絶賛される。しかしそこに繰り広げられる世界を、
見ている観客は我が事として受け止め、そしてそこから何かを生み出すか・・・・・それが疑問だ。

 劇評を書く人も外国語を専門とする人が主流だ。
外国の戯曲を絶賛する・・・・・日本の戯曲を読まない・・・・と思う。
そして翻訳劇を絶賛する・・・・・

 わたくしたちの国の作家は、戯曲を書くがあたかも私小説の如き、自己の内面に拘泥した戯曲が多い。

 今、直面する社会の中で演劇は、何が出来るのだろうかと、いつも思う。

そういう点で、今回の上演は、再度演出を検討し、演技を検討して、
いい舞台に練りなおして全国を巡演するといいだろう。

時間も二時間以内に収めることだ・・・・・  

 頑張ってほしい・・・・いい俳優もいたのだから・・・・

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