井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 新作能「紅天女」(原作「ガラスの仮面」)梅若玄祥・福王和幸・鳳翔大出演

<<   作成日時 : 2017/08/30 15:20   >>

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「紅天女」を観た(2017年8月29日 銀座観世能楽堂)

 銀座に出来た新しい能楽堂に行ってみたくて、新作能を観た!

もともと漫画はあまりよまないほうだから、「ガラスの仮面」(美内すずえ作)も読んだことはない。

脚本 植田紳爾   演出・能本補綴 梅若六郎玄祥  原作・監修  美内すずえ

当日配布されたプレイビルで、宝塚の植田紳爾が能の脚本も作っていたことを知り、驚いた!

この作品は、国立能楽堂委嘱作品として作られたそうで、何度も演能されている。
原作の漫画は、まだ完成していないと、プレトーク(美内とプロデュサーの西尾智子)で話していた。

初めに月影千草(鳳翔大)が橋掛かりに登場して前置きのはなしを朗読する。
 美しい鳳翔が立つと能楽堂の空間が変わる!

次にいつもの演能の如く、
笛(竹市学)小鼓(成田達志)大皷(亀井広忠)太鼓(林雄一郎)
地謡(林宗一郎・角当直隆・田茂井廣道・松山隆之・谷本健吾・川口晃平)
後見(山崎正道・小田切康陽)・・・が入る。 作り物が出たから、前段後段があることが分かる。


そして東の者(茂山七五三)と西の者(茂山千三郎)が、登場…・狂言だ。普通は初めには出てこない。
領地の境界を越えてはいけない、という一くだりがあり、けんかをして・・・・退場。(どうやら導入部らしい)

(付記:時たま〈口開間〉といって初めに狂言が出て今回のように所の者が語る能もあるようだ)

ワキ仏師(福王和幸)が登場。そして阿古夜(梅若六郎)が出て・・・・何やら問答・・・・

 解説によると、
戦乱と天変地異が続いたとき一真という仏師が千年を経た梅の霊木から輝ける天女像を彫り世の乱れを鎮めたという。梅の木の化身阿古夜と一真が出会い、恋をする・・・・この辺りが不思議・・・

 木を切ると命がなくなるわけだから・・・・伝説は女が身を削るものなのだ・・・・一真は悩む。
世を救うために切って天女像を彫る…・西洋のいけにえの発想に通じる・・・・のか?


 現在では樹木を切るという行為は、難しい問題をはらんでいる。
津波や地震で大きな被害を受けている人たちが現在も解決していなくて・・・・
こういう現実をどう受け取るか・・・・観客共々考えなければならないということで、おそらく提出された・・・・・

(美内もそのようなことをはなしていたし、この新作能はそういう現状を受けて作られたそうだ・・・・)

 紅谷に紛れ込んだ仏師は、同じような体験をする。

 前段と後段の間に、狂言の東の者と西の者が再度出て、地震や津波の被害にあい、
これまで境界あらそいをしていた両者が仲良く過ごすようになるという一くだりがある。
 紅谷の話につなげる・・・・

 
 後段は、作り物の中で変身した阿古夜が、天女になって登場する。舞は激しくなる・・・・

興味深かったのは最後で、これまで観た演能だと、大体舞台上で終わる。そしてその後は普通に下がる。

今回は、橋掛かりを行ったり来たりしながら、演技のまま幕内に消えるところで、
面を付けた阿古夜や天女は、登場から最後まで、舞台上で「素」に戻ることなく演じきっていたことだった。

昔からある能にそういう演目があるのか否か、残念ながらわからないが、
おそらくこれも新作能の試みの一つだったのかもしれないと思った。  
 

興味深い演能であった。

  ☆      ★      ☆

 ついでに一言。

「観世能楽堂より 観能マナーのお願い」が配布されていた。

そこにはいつも劇場で事前に言う、携帯電話やスマートフォンの電源を切るということ。撮影録音禁止。
飲食のご遠慮願い、演能中の私語のご遠慮願い、

特別は「舞台に触れないでください」「白洲(舞台の周りの白い敷石)に入らないでください」「演能中の出入りは極力御遠慮ください」の三点。

 観客は、若者たちも多く、能の観客も変わってきた証拠なのだろうが、考えられないことをする人たちがいるという事が、よくわかる。

 国会も劇場も、あるいは学校も、病院も、人の集まる所でこれまでの常識が通用しなくなり、非常識がまかり通るようになったのだと、未来が怖くなる・・・・・


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