井上理恵の演劇時評

アクセスカウンタ

zoom RSS SCOT鈴木忠志演出「北国の春」「サド侯爵夫人」(吉祥寺シアター)

<<   作成日時 : 2017/12/26 20:54   >>

トラックバック 0 / コメント 0

SCOTの「北国の春」「サド侯爵夫人」を観た(2017年12月22日吉祥寺シアター)

「北国の春」

原作 鹿沢信夫  校正・演出 鈴木忠志  

出演 植田大介・塩原充知・内藤千恵子・石川治雄・加藤雅治・平垣温人・米山はるか

「利賀から世界へ 9」の菅孝行の一文(「『宇宙人』による『亡霊』殺し」)によると、唐沢信夫は鈴木忠志らしい。
1979年に唐沢名で発表した原作・台本「家庭の医学」があり、早稲田小劇場で上演したそうだ。

この時期、比較的しばしば早稲小には通っていたが、これは観ていない。

チンドン屋夫婦(?)といっていいのかどうかわからないが、母はチンドン屋で「北国の春」を歌う。
父は、文章によると認知症らしいが、クラリネットを吹いている。

息子は、パソコンを前にして、閉じこもり青年のようだ。

彼の廻りを取り囲むのは、彼の脳内・あるいは幻覚的な存在で、すでに背中に張り付いている。ヴァーチャルな存在。

母と子の断絶、言葉が通じない親子、最後に息子による母殺し・・・・・

・・・・・らしいが、この辺り、よくわからなかった・・・・・何となく、〈古い〜〜〉という感じがした!

今、パソコンよりもスマホに皆はむちゅうになっている。
そこで結ばれるラインだか、インスタだか、フェイスブックだか、・・・顔も知らない・・・・あああ、顔を出す場合もあるようだが、そんな疑似関係で繋がっていて、面白がっている。

そういう世界は、引きこもりとは異なるのではないかと思う。

同じ意見の存在しか認めない疑似関係でおそろしい関係が生み出されているのだ。
そういう世界を描き出してほしかった・・・・と・・・・観終わって思った。

「サド侯爵夫人」

鈴木演出SCOT俳優出演の「サド侯爵夫人」は、この集団の絶品! 
最高傑作だと思っている。

今回は二度目・・・・前回も吉祥寺シアターで観たが、その時よりも衣装も豪華になり、動きが変化し、装置も変わった。
檜の香りがして何とも言えぬいい雰囲気を感じた。利賀村の舞台に似せたのかもしれない。


モントルイユ夫人 斎藤真紀   その娘ルネ・サド侯爵夫人 佐藤ジョンソンあき
 その妹アンヌ   鬼頭理沙    サン・フォン伯爵夫人  内藤千恵子    男  蔦森晧祐

 「利賀から世界へ 9」 の中で、鈴木・渡辺保・菅孝行の三者の話が載っている。

それらを読んで学ぶところは、多かったが、幾つか感じ方も異なったところもある。

結局は、三島由紀夫の作品の中では、「サド侯爵夫人」がやはり最高傑作である、というところに落ち着く。

私もそう思っている。が、ギリシャよりもむしろフランス古典劇なのでは・・・・??

三島はフランス演劇…特にラシーヌの作品を超えるものを書きたかったのではないかとわたくしはみている。

そして、これは古典であるから、つまりは歌舞伎の〈緑・見取り〉の如く、
一番重要な見せ場だけを上演することが可能という事なのだ。

観客は、この芝居の筋も結末も知っている。あるいは万が一知らなくても構わない。
この二幕の一場だけで三島のセリフを堪能し、俳優のセリフ回し(朗誦術といってもいい)に酔い、芝居の面白さを知る。これが、二幕の全てなのだ・・・・と思う。

そして三島が、この戯曲で言いたかったこと・・・・・上品な俗物の母とその人に育てられた娘が俗物の娘にならず異端を選び、異端に生きたこと、両者の内奥に在ったものが、徐々に暴かれること・・・・・これが面白い!

渡辺保が「かぶき」といっているのは、そういうことでもあるのではないかと・・・・

思えば、鈴木はこれまで構成演出してきたのは、〈緑・見取り〉の場(つまりはクライマックスの場)を作って来たのではないかと、この度この舞台をみて再度思ったのが、わたくしにとっての新しい発見だった。

「劇的・・・・」もそうだった・・・・!

能とも歌舞伎ともそして新劇の近代リアリズム演劇とも異なる〈20世紀の朗誦〉を生み出し、
それが最も活きる舞台を生み出した。スズキメソッドが、それを可能にした。

その方法に三島由紀夫の「サド侯爵夫人」は、ぴったりとはまったのである。










サド伯爵夫人 英文版?Madame de Sade (Tuttle classics)
チャールズイータトル出版
三島 由紀夫

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by サド伯爵夫人 英文版?Madame de Sade (Tuttle classics) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

サド候爵夫人 (1969年)
新潮社
三島 由紀夫

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by サド候爵夫人 (1969年) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

月別リンク

SCOT鈴木忠志演出「北国の春」「サド侯爵夫人」(吉祥寺シアター) 井上理恵の演劇時評/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる