井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚花組 明日海りお主演「ポーの一族」(萩尾望都原作、小池修一郎脚本演出)

<<   作成日時 : 2018/01/05 13:12   >>

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明日海りおの「ポーの一族」を観た(2018年1月2日宝塚大劇場)

 想像以上に美しく幻想的で、何とも言えぬ幽玄の世界が展開していた!

小池修一郎が何十年も前から舞台化したいと願っていた人気漫画作品という前評判があったから、
長い原作を二時間半の舞台で表現するのには、どのような構成になるのか・・・・
緊密な空間を舞台で生み出すことができるのか・・・・
興味深々で幕が上がるのを待っていた・・・・。(台本未見・原作はコンパクト版読む)

幕開きは現在時間、過去にバンパネラの登場した場所や時を語り出す・・・・現実であるが、地の文に当たる。
語り手は、〈バンパネラ研究〉の関係者たち(和海しょう・華雅りりか・水美舞斗・綺城ひか理)。
彼等は、唯一人間だが、良識的存在。

彼等は空港で出会い物語の中へ観客を誘う・・・・・
空港という場所がいい、時空を超えた地に観客を連れて行くように思えるからだ

字幕や映像を使いながら舞台装置を引き立たせて緊密な場面を作りはじめる。

子供のエドガーは、まだ人間・・・・生まれたばかりの妹と共に捨てられる。・・・・彼らは孤独、疎外された存在・・・・
ポーの一族の首領の家に拾われて大きくなる。

明日海りおの登場は、エドガーが中学から高校へ行く頃、妹のメリーベル(華優希)も大きくなっている。
エドガーは、村の子供たちにいじめられてばかりいる。エドガーの住む家が、怪しい家だという事で・・・

彼は、居場所がない、はじかれた存在なのだ。安全安楽の場は、ポーの一族の家の中だけ・・・・
しかし彼は、そこでも反抗している・・・・このあたりの人間・エドガーの明日海の表現が、実に現実的でいい・・・
この後の一族の仲間入りをしてからのエドガーとの違いが鮮明で、素晴らしい〜〜

一族の仲間入りをするために現れたシーラ(仙名彩世…美しく優雅)を知る。
婚約式・・・・ポーの一族の華やかな式典・・・

彼女はポーツネル男爵(瀬戸かずや・・・素敵なバンパネラ)と恋をして結婚、永遠の命を貰いポーの一族になる。

一族の屋敷に住む人々は、人間たちとは異なり、幻のよう・・・・・優雅に生きている。
ここには争いもない。その意味では、楽園・・・・だが・・・・

ただ一つ、人間たちにその存在を知られと殺されるから、その恐怖に常におびえていなければならない。
あたかもナチスの探索を恐れるユダヤ人たちのように・・・・
あるいは反体制運動をするレジスタンスが、警察権力の横暴を恐れる如く・・・・・


村人(天真みちる・・・・何役がやっているが、なかなかいい)たちに一族の屋敷が襲われ、首領の老人や老婦人が殺される。

消える前にエドガーに首領の濃い血を受け継がせる・・・・年をとらない少年が、ポーの一族の仲間入り・・・

エドガーが身体の弱いメリーベルに血をあげて彼女も仲間入り・・・・・

ポーツネル男爵夫妻とその子供二人になって彼等は、馬車で移動する・・・・

アラン(柚香光)の居る地に落ち着いた一家。
この地で母(花野じゅりあ)と二人で暮らすお金持ちのアランと学校で知り合う。

人間の世界の婚約式・・・青年医師(鳳月杏)と病院長の娘(桜咲彩花)・・・地味に表現される。

これは〈ポーの一族〉の婚約式と対になって置かれている。

先の式典は、一族の滅亡の前の絆を深める最後のものであった。

人間の式典では、醜い人間たちの隠された姿が、利害関係が、この後暴かれていく・・・・

金持ちの子供・アランと年長の娘と結婚させようとする伯父一家、
ハンサムな若い医師にいい寄る女とそれを拒否しない医師、それに悩む婚約者・・・・等々

人間の醜さの象徴として、彼らの在りようが描出される。

若い二人をポーの一族に加えようと計画する男爵夫婦は、医師の女好きを利用する。

他方、アランは病気の母に取り入る伯父や医師の姿、自分にまとわりつく従姉(城妃美伶・・・・浅はかな役でお気の毒)や学友たちに、絶望していた・・・・彼も居場所がない・・・・

メリーベルに会って、惹かれるアラン・・・・けれども彼女は死ぬ。 

海辺へ行くと危険という忠告を忘れ、シーラは医師を誘惑するために海辺の家に・・・・
この場のシーラはコケティツシュで、引きこまれそう・・・・
この青年医師は、もともとシーラの美貌に惹かれていたからすぐにその気になる・・・
けれども何故か彼は軽薄ではない…そんな医師を鳳月が好演。

悲劇が訪れる・・・・シーラが打たれ・・・男爵が打たれ・・・エドガーは一人で旅立つことに・・・・

他方全ての人間関係に絶望したアランは、孤独なエドガーと共に行くことを選択する・・・・・


小池は長い物語の中で、始まりの時を選び、
何故エドガーが一族に加わったのか、アランも何故自ら一族になることを選択したのか・・・・
そこに焦点を置いた…・・単なる筋追い芝居に終わるのが回避された

この着眼点は素晴らしい〜〜〜

二人とも、人間世界から疎外され、絶望していたのだ・・・・生きる道がない・・・・居場所がない・・・・
そういう存在の少年二人が、生きるためには永遠の命を獲得しなければならなかった。

しかし、その永遠の命も、醜い人間世界で生き続けることでしか保証されず、しかも彼らの存在が明らかになれば抹殺される・・・・・という矛盾の中でしかあり得ない・・・・なんという不条理・・・・

これは、わたくしたち人間にも言えることだ。
わたくしたちは同じような不条理な世界で、実は孤独に生きているのだと、この舞台は告げていた・・・


最後の場面

ゴンドラでアランとエドガーが、この世のものではないかの如く美しく立ち去る場が素晴らしい!!

明日海りおと柚香光と、そのほか瀬戸かずやと鳳月杏・水美舞斗などなど・・・花組の眉目秀麗の男役たちが存在して初めてできた舞台だと、いまさらながらではあるが、痛感した次第・・・・

フィナーレの、ダンスも見事であった。

今年の必見舞台である・・・・・是非、劇場へ・・・・
そして人間が抱える不条理の世界を肌で感じてきて欲しい・・・

  立ち見が凄い〜〜〜!!    立っても観る価値あり‥‥

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