井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝生会 春の別会能「熊野 膝行三段之舞」(宝生能楽堂)

<<   作成日時 : 2018/03/26 11:13   >>

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「熊野」を観る(2018年3月25日)

 「熊野」は「松風」と共に何度見ても飽きないと言われる演目で、多くの人に好まれている。

 今回の演者は、

 シテ(熊野) 金森秀祥、  ツレ(侍女朝顔) 渡邊茂人、  
 ワキ(平宗盛) 森 常好、 ワキツレ 梅村昌功


 熊野は宗盛に愛されていた。 遠江国池田(静岡県池田)の出身であるが、今は都で暮らしている。
故郷の母が病気で、熊野は心配している。けれども宗盛が帰郷を許さない。

侍女の朝顔が母の病気が悪化したという手紙を持参する。母は熊野に一目会いたがっていた。
手紙を宗盛の前で読み許しを乞うが、権力者の宗盛は、それを許可しない。

宗盛は、花見に清水寺へ行くと言い、熊野に同行を促す。

  能舞台では、作り物のの牛車が舞台に出る。
  正面を向いて右に宗盛と従者、左に牛車に乗った熊野と侍女、
  互いに一列になって清水寺まで進む樣が謡と共に表現される。
  この表現も最小限度の動きで、行列しているように感じるのだ。省略の美・・・

  車は作り物だから動かない。車輪のような輪が動いているように感じるから、不思議だ。
  作り物の中のわずかな動きで〈心、ここにあらず〉の熊野の内心が表現されて、見事!

清水寺に到着した宗盛は、熊野に舞を舞わせる。

  熊野の舞は悲し気であるが、しかし華やか。面に手を添え涙を隠す仕草は絶品。
  これはまさに能ならではの究極の表現だ。(戸井田道造に「涙をかくす」に関する一文がある)


雨が降ってきて花が散る。熊野は歌を詠む。花が散る母が亡くなる・・・

「いかにせん 都の春もをしけれど 馴れし東の花や散るらん」

宗盛は、察して熊野が母の所へ帰ることを許す。熊野は急いで帰郷する。

  筋が明確だからこのまれるのだろう。素人でも理解しやすい。
  美しい熊野が哀しみを抱えて舞うところがすばらしく、
  演者は、品よく哀しみや動揺を表現していた。


大鼓 佃 良勝、小鼓 曽和正博、笛 一噌康二

地謡:東川尚史・高橋憲正・山内宗生・藤井雅之・小倉敏克・高橋章・前田晴啓・武田孝史


  ☆ 演能は全て観ると長くて疲れてしまうのだが、1、2、番なら耐えられる・・・・


  

 



  

 

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