井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 「修道士は沈黙する(Le confessioni)」(Bunkamura ル・シネマ)

<<   作成日時 : 2018/04/15 11:49   >>

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ル・シネマで「修道士は沈黙する」を観た(2018年4月12日渋谷Bunkamura)

 久しぶりで文化村へ行った。何とも言いようのない奇妙な,しかし怖いミステリーであった!
外国の俳優たちの個性的(顔も体形も異なる故で、日本人もこうあって欲しいが残念ながら皆、同じ・・・・)で厚みのある存在感に、いつもながら感心する。

 資本主義社会のメカニズムが、不平等の上に存在し、豊か貧かの二極しかないことがまざまざと知れる。
それを動かしているのは、誰なのか・・・・・そんな分析が最後に浮かび上がり、怖い・・・。

 淡々と静かに美しいバルト海を背景にして展開していく物語は、一人の修道士がG8財務相会議に招かれるところから始まる。

 もう一人招かれた人は、童話作家の女性。これがなんとも皮肉に聞こえて興味深い。彼女は隣室の修道士の部屋を、カギ穴から覗く・・・・・〈沈黙して見る〉

 二人を招いた人は国際通貨基金理事のロシェ・・・・・
彼は修道士に告解する。何を語るかは、徐々に明かされる。

 その内容を他の財務省たちが知りたがる。なぜならロシェが死んでしまったから・・・・・自殺か他殺か!!
修道士は、告解の内容は明かさない・・・・〈口をつぐむ沈黙〉

国際通貨基金とは、
 「国際金融、並びに、為替相場の安定化を目的として設立された国際連合の専門機関」
 「国際通貨基金(IMF)の本部は、アメリカ合衆国の首都ワシントンD.C」.にある。
 「為替相場の安定のために、経常収支が悪化した国への融資や、為替相場と各国の為替政策の監視などを行っている。」
 「各国の中央銀行の取りまとめ役のような役割を負う。世界銀行と共に、国際金融秩序の根幹を成す」組織。


 映画の中で映像に向かって話す場面があるのは、アメリカの本部と話すということになるのだが、
映画の中ではそういう説明は一切ないから、ボーっとみていると、国際通貨基金IMFの本部かどうかもよくわからない・・・・・
(隣席のシニア―女性二人組は、見終わった後で、わからない・・・と、この映画について話していた)

映画は、リーマンショック後の話であるようだ。
そしてこの会議で何やら世界が大騒ぎになるような決定を下そうとしているようで、各国代表が賛成と反対に分かれている。

そのカギを握っているのが、ロシェであった。

物語は、広い古典的なホテルで話が進むから、緊迫した舞台を見ているように思える。
何が起こるか予測がつかない

昔見た「薔薇の名前」ほどの緊迫感はないものの、
元数学者の修道士(主演)を演じるトニ・セルヴィツロが、
圧倒的な「無」「沈黙」の世界をわたくしたちに見せてくれる。

個性的なエコノミストたちと対等に渡り合う場面は圧巻だった。

とぼけた犬が・・・・・・脅威と安堵を与えて面白い・・・・・

死んでしまったロシェの死をめぐり、
一方で警察が尋問する映像と
他方で修道士に告解するロシェの言葉とが、交互に映像に登場する

・・・・自然主義的である反面、それを否定するかのような過去と現在の入り混じった表現が、沈黙と共に進んで見事だ。

そして修道士の登場と共にわたくしたちに示されるのは、ボイスレコーダー・・・・・近代機器!
彼は自然の鳥の声を録音している。これも象徴的だ。

このドラマは「沈黙」について様々な思考を与えてくれた。

 マザー・テレサは次のように言ったらしい。

「神は沈黙の友です。わたしたちは神を見つけなければなりませんが、騒音や興奮の中に神を見いだすことはできません。自然が、木が、花が、草が、深い沈黙の中でどうやって成長していくかを見なさい。」

詞を持たない植物たちの「沈黙」

沈黙・・・目の沈黙・舌の沈黙ー物理的な沈黙・心の沈黙がある・・・・・と。

 
「神の沈黙は、神の最大の雄弁と言っていい。」という考え!
‥‥イエスが十字架の死の前で何故沈黙したのか・・・

 そして最後に映画の沈黙する修道士は、財務相たちの前で、ロシェの示した数式を見せる。
実は彼は元数学者であった!

その数式は、未知の不可能性を示していたらしい・・・・・解けない世界

そして財務省たちの決定は、NON・・・・・ 沈黙が危うい秩序を戻したのか…?

鳥は、沈黙をしない、が言葉は発しない。声を出すことで意思表示をし、人を恐怖に落とし、かつまた癒す。
犬は、沈黙をしない、が言葉は発しない、声を出すことで意思表示をし、人を恐怖に引きこみ、かつまた愛す。

さて、わたくしたちは凡庸な人間の「沈黙」は何をもたらすのか・・・・

今、「危うい秩序」の前に生きるわたくしたちにできることは、「沈黙」ではなくて、
「行動すること」「声をだすこと」だと、覚った次第

1945年夏を、再び迎えないために・・・・・  是非映画館へ・・・・・

文化村のあと、日本全国を順番に上映し続けるらしい・・・・




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