井上理恵の演劇時評

アクセスカウンタ

zoom RSS 「マルクス・エンゲルス」(カール・マルクス生誕200年記念作品・岩波ホール)

<<   作成日時 : 2018/05/02 08:25   >>

トラックバック 0 / コメント 0

ラウル・ペック監督作品「マルクス・エンゲルス」を観た(2018年4月30日神保町岩波ホール)

原題はフランス語で「若きカール・マルクス」、監督はハイチ出身のラウル・ペック。この映画で多くの賞を得る。

世界を震撼させた「共産党宣言」(1848年)誕生までの若いカールとフリードリッヒの出会いと自己変革が描きだされている。二人の成長物語と共産主義の誕生までの話・・・・。

とはいえ、この映画が始まるとき、20代のマルクスは既に哲学者、
現実に懐疑的な理論家で執筆活動をしていたし、時の体制に追われる身であった。

(映画は枯れ木を集める農民が捉われる場面から始まる・・・・・・19世紀の官憲は現在同様に残酷・・・・
枯れ木に所有者がいるのかいないのか‥‥マルクスは語る・・・・そしてその彼も捕まる)

 資本論の始まりだ・・・・・・・

対してエンゲルスは、工場経営者の息子で自身の置かれた立場や資本家の父と工場労働者たちとの対立や処遇に疑問を持っていて、彼の活動家への成長が描かれている。

その意味では新思想共産主義理念の成長と哲学者マルクスの経済学者への道と資本家の子息エンゲルスの理論家・解放運動の活動家への成長・・・・という一種の「ビルドゥングスロマン」映画・・・・

「解釈の時代は終わった。変革しなければ・・・・・!」 と彼らは言った。

そうなのである、わたくしたちは解釈の時代に戻りつつある今、変革しなければならない・・・・・!!

20世紀の新思想として世界に最大の影響を与えた「共産党宣言」が登場した時、
わたくしたちの島国・日本国は江戸時代嘉永年間でヨーロッパやアメリカの外国船がしきりに航行していた時、
近代の夜明けが間近に来ていた。

マルクスをアウグスト・ディール、その妻イェニーをヴィッキー・クリ―ブス、
エンゲルスをシュテファン・コナルケス、その同志で恋人メアリー・バーンズをハンナ・スティール、
無政府主義者プルードンをオリヴィエ・グルメ・・・・・

とにかくヨーロッパ各国出身の俳優たちが身体も容貌も一様ではないために映画に厚みが出るのである。

近年、日本の俳優たちは皆、似たような身体や容貌を持つ形成美男や美女が多すぎて薄っぺらだから、
俳優たちを観ているだけでも、重みがあり説得力がある。

演じる俳優たちの存在感が素晴らしい

ビルドゥングスロマン的であるが、構成に写実主義・自然主義を貫き通しているわけではない。
したがって、日本のどこやらの局の連続テレビ小説のつもりでぼんやり見ていると、わからなくなるだろう!

興味深かったのは、生真面目な貴族出身の妻を持つマルクス夫妻のベッドシーンが、長めに描出されている事

対して、好色家で「女好き」で沢山の愛人がいたと巷間でいわれているエンゲルスの「ぬれ場」は、一切描かなかった事である。
恋人メアリーが「妹がフリードリッヒの子供を産みたがっている」と一言いうのみ・・・!

つまらぬ言説の流通を防ぎ、危機に瀕している現在の世界に
人の存在の権利と在りようを謳った「共産党宣言」の存在を思い出させる・・・・・

21世紀の現在、日本ばかりではなく、世界各国で人間社会の在りようも恐ろしく変わっている。
どうにかしなければならない・・・・・
そんな思いが伝わってくる・・・・・

チラシに「世界中に貧困と格差が拡がる今日、彼らのエネルギーが私たちに突きつけるものとは――。」

是非岩波ホールへ・・・・・6月15日まで上映・・・・11時、13時半、16時、19時(18時半)

16時の回を観たが満員であった、中高年と若者が観客・・・・・




【中古】 マルクス・エンゲルス 共産党宣言 岩波文庫/カール・マルクス(著者),エンゲルス(著者),大内兵衛(訳者),向坂逸郎(訳者) 【中古】afb
ブックオフオンライン楽天市場店
カール・マルクス(著者),エンゲルス(著者),大内兵衛(訳者),向坂逸郎(訳者)販売会社/発売会社:

楽天市場 by 【中古】 マルクス・エンゲルス 共産党宣言 岩波文庫/カール・マルクス(著者),エンゲルス(著者),大内兵衛(訳者),向坂逸郎(訳者) 【中古】afb の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

世界の名著 (54)マルクス エンゲルス I(中公バックス)
中央公論新社
マルクス

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 世界の名著 (54)マルクス エンゲルス I(中公バックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

月別リンク

「マルクス・エンゲルス」(カール・マルクス生誕200年記念作品・岩波ホール) 井上理恵の演劇時評/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる