井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 宝塚月組 月城かなと主演「THE LAST PARTY フィッツジェラルド最後の一日」

<<   作成日時 : 2018/06/20 18:44   >>

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月城かなと「ラスト パーティ」(作・演出植田景子)を観た(2018年6月19日 日本青年館)


 月城かなとのフィッツジェラルドが、素晴らしい!  
相手役の海乃美月(妻)も身勝手で美しいゼルダを好演。

初演は2004年10月の宙組(大和悠河・彩乃かなみ)、一か月後に月組(大空祐飛・紫城るい)。
再演が2006年2月に宙組(大和・紫城)青年館、一か月後に月組(大空・彩乃)東京芸術劇場、という面白い上演方法を取った人気演目。

スコット・フィッツジェラルド作品のミュージカル初脚色は、1991年の小池修一郎の「華麗なるギャツビー」(原題・グレイト・ギャツビー)。


1920年代のロストジェネレーションの作家フィッツジェラルドは、自己を投影しながら、アメリカの輝いていた20年代の狂騒をを描出して、「愛」を追求した作家と言っていいかもしれない。


この作品は、スコット・フィッツジェラルドの生涯(1896−1940)を描出しているが、植田景子のオリジナルミュージカル。

とびきりの美人、金遣いがあらく遊び好きのゼルダを獲得するために「楽園のこちらがわ」(1920年デビュー作)を必死で書いたスコット。この時彼は24歳だ。この後二人は結婚する。

長編小説「グレイト・ギャツビー」は1925年。30歳前である。

この間、メロドラマラマの短編をたくさん書いて執筆料を得て、妻の浪費に充てる生活。
大手出版社スクリーブナーズの編集者マックス・パーキンス(悠真倫)の援助と支援でかろうじて生きる。

パリでアーネスト・ヘミングウエーに出会い、パーキンスを紹介し、ヘミングウエーのデビューにも一役買う。

1929年、、アメリカ・ウオール街で株価の大暴落、たちまち世界大恐慌、狂騒のジャズエイジは終わる。
セルダが翌年発病・・・・・入院・・・・以後は入院費用を稼ぐために書くスコット。

二人の娘は、結婚後直ぐに生まれたが、母のいない彼女は寄宿舎生活、これにもお金が掛かる。

ハリウッドで映画脚本を書いて稼ぎ、シーラと出会い、酒におぼれ、心臓を悪くして・・・・
映画のコラムニストでゴシップなどを書いていたシーラ(憧花ゆりのーいつもながら好演)と同棲、
死ぬまでの間、彼女に生活を支えられていたという記録がある。

 植田景子の脚本は、こうしたスコットの生涯を彼の死んだ日、1940年12月21日から始める。(台本未見)

さらには、俳優がそれぞれの役を演じるという発端を入れて、ドラマが動き出す構成を今回はとっていた。
単純な一代記では、お涙頂戴式でもう古い。こうした客観的構成にしたのは成功であった。

スコット役の月城が、発端でたしか〈芝居は嘘〉というようなセリフを言っていた気がした。
これは良くない。
芝居は〈虚〉であるが、〈嘘〉ではない。  〈嘘〉は他者を騙すためにつくものだ。
芝居は観客を騙すものではない。

芝居は観客に〈虚〉の世界を見せて展開しながら、そこに〈真実〉を発見させるものなのであるから・・・
このセリフは、是非とも書き改めて貰いたい。

月城は44歳の酒浸りで心臓の悪いスコットのメイクのままで、これから始まる20代30代を演じていた。
これが素晴らしい!  

写実に徹してメイクを変えることなく、
演技で若さ・焦燥・怒り・哀しみなどを得も言われぬ全身の身体で表現・・・見事であった
この人が大劇場のセンターに立つ日を早く見たいと思ってしまった。

現在時間の1940年から、一番遠い過去へ1919年のスコットとゼルダの出会いへ・・・・
そして結婚、毎日のダンスパーテイー、スコットのいらだち、ゼルダの海軍士官(英かなと)の恋、その出現に怒るスコット・・・・

間に編集者とのやり取りや、借金の申し込み、ヘミングウエー(暁千星)との出会い、ゼルダの入院、有能な秘書ローラ(夏月都…いつもながら手堅い)、二人の娘スコッティ―(菜々野あり)・・・・この娘突然出てきて10歳だか15歳?  前半に娘が生まれたというセリフが欲しかった。

スコットの小説が、大恐慌後に受け入れられなくなり、他方でヘミングウエーの小説は絶賛される状況を入れて、スコットの悲劇をクローズアップしていた。これも観客にはよくわかり、彼の悲劇にインパクトを与えていた。

興味深いのは、スコットの小説を、古いと言って読者が大きなドラム缶のゴミ箱に順番に捨てていくシーン。
面白い表現で何も言わなくても分かる。ミュージカルならではだろう。

名場面と言われてきた公園(大学の構内?)の場で、若い学生(風間柚乃)がスコットの小説を読んでいて、若者らしくいろいろ講釈する、そして最後に伯父さんも読んだら・・・(たしかそういった)と話して消える。

スコットはこれに救われて書きだそうとする・・・・・いかにもの場と思われがちだが…人は、こうした無関係の人間の思いがけない言葉に救われることもあるのだから・・・・・

最後に1940年に戻って・・・・

実話ではスコットとシーラは恋人同士であったのだが、

ゼルダへの愛をクローズアップするために、作・演出の植田景子は、濡れ場を作らず、スコットに、「愛している」とセリフを言わせて終わらせていた。

 一人で暖炉で死ぬ前に、
シーラとスコットの過去を振り返りながら発する対話のやり取りの場が絶品。
憧花と月城の演技の見せ場になっていた。

 彼女が去った後、スコット役の俳優は、どうやって死ぬか演技の検討を繰返しながら暖炉に向かって暗転。
これもとてもいい!!

 自然主義的な表現を避けて、余韻を残した。

この舞台はこの後、梅田で公演があるという。

さらなる緊張感と影と光の出現を期待したい・・・・月組生の生み出したいい舞台であった





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