井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 二兎社 永井愛作・演出「ザ・空気 ver.2 誰もかいてはならぬ」

<<   作成日時 : 2018/06/27 09:37   >>

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永井愛の新作「ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ」を観た(2018年6月26日マチネ、東京芸術劇場イースト)


 昨年に引き続き、永井愛の〈政事〉もの。面白い!!!

終わろうとしている「平成」という〈時代の事件と性格の典型〉を描出して見事!

今回の舞台は、記者クラブ・・・それも国会議事堂をのぞむ国会記者会館に出入りすることのできる〈エリート記者〉が所属する〈エリート記者クラブ〉と政権の話で、記者と国家のナンバー3との癒着が大テーマ。

発端は〈うっかりミスの発覚〉からはじまる。

場所は、国会記者会館の屋上。 時は、うっかりミスの発覚した時からほぼ半日。
筋は、このミスの処理を巡る行為・・・・この対応で癒着や記者クラブの問題点が明るみに出る。

ということで戯曲構造のモデルのような作りで、事件が展開する。偶然は何一つない。
〈政事〉は〈笑〉を伴ってはじめて批判が生きる。いつもながらこの点もとてもいい・・・

つまらぬ芝居を書いている若手劇作家たちは、よく学ぶといい。

登場するのは、

政権直結・総理べったり保守系全国紙論説委員飯塚俊郎(松尾貴史・・・いい味を出していてテンポもいい、現総理そっくりの部分が砂をかむような内容に笑いを誘い楽しい)

対するはリベラル系全国紙政治記者で官邸キャップ及川悠紀夫(眞島秀和・・・好演。優男で神経質そうだが、出来る男らしく仕事重視、それで女房が子供を連れて出て行き、離婚したらしい・・・・

・・・・・余談だが、大体忙しい職場で働く男は近年のドラマでは必ず離婚している。
その最たるものが刑事と新聞記者・・・・これが現実なのかどうかは不明、殆どそういう刑事や新聞記者が描出されるところをみると現実の反映なのかもしれない。

が、このシチュエーションが全然理解できない・・・家に帰ってこない、子供の面倒をみない、一緒にどこかへいけない・・・・そんなことで出ていく妻なら、初めからそういう職業の男と結婚してはいけないのだ!!! 
どうせ恋愛する時も結婚するときも選択しているくせに・・・・いつも一緒に居られるのは働かない人間だろう・・・そしたらこの資本主義社会で誰がお金を稼ぐの?・・・閑話休題)

飯塚の新聞社の新米記者で官邸総理番小林司(柳下大・・・身体が今風でピリッとせず、生きる構えが無いくせに権力志向と無駄な正義感とのはざまで揺れる若者を写実で演じていていいのだが、あと一歩の味付けが欲しい)

女性記者のエリート、大手放送局(推測ではNHK?)政治部記者で解説委員で現総理と親しい(とはいっても週刊誌ネタの色恋関係ではない)秋月友子(馬渕英里加・・・・美しく利発な女性で同性に思いやりもあるエリートを演じていていい、だいたい権力をもった女性は、定番の如く魅力的ではなく厭な女に描出される。そういう女もいるが、実はそうでない女の方が多いのだ)

こういう記者クラブのエリート記者たちのなかに、突然迷い込むのが
ネットテレビ局〈アワ・・泡を連想・・タイムズ…もちろん作者は Our Times のつもりだろうが・・・〉の代表井原まひる(安田成美・・・・この女優の身体表現とセリフが一番難問・・・・それでドラマの前半が弛緩する・・・どうにかしてほしい‥‥折角の舞台なのに・・・・)


 登場人物を記しただけで、この舞台がどのように展開するのか理解できるだろう。
一枚のコピー原稿が、コピー機に残されていたことから、事件は起こる。

公演は9月まで全国で続く。内容に触れるとなぞときが面白くないから記さない。

是非、近隣で公演している時、足を運んで欲しい。
(東京ー三重―愛知―長野―岩手―山形―山口―福岡―兵庫ー愛知―滋賀
・・・・沖縄・四国・大阪・京都・奈良・新潟でも是非やって欲しい・・・・)

そして舞台を観て、プログラムを購入していろいろ考えてほしいと思う。


最後に記者クラブについて、プログラムから得た知識を孫引きし、わたくしなりの解釈を加えると・・・・

記者クラブは、日本独特のものだという。

1890年第一回帝国議会開会に際し、取材拒否をする議会に対抗するために記者たちが、「議会出入り記者団」を結成したのが、始まり。つまり発端は、意義深いものだったのである。

それが現在の如く変質したのは、太平洋戦争時言論・報道統制下で、記者たちは各官庁の発表をそのまま流さなければならなくなった。やはり表現の自由が無かったことが原因だったのだ。
・・・・以後現在まで発表を流す形式がとられているという。


記者クラブ解体改善の動きも21世紀になってあった。

2001年、長野県田中康夫知事が「脱・記者クラブ」宣言を出す。

2006年 北海道が「道政記者クラブ」に対して記者クラブの水道光熱費を2500万円要求した。
    (記者クラブは無料で使用している・・・・つまり税金でまかなわれている)

2009年 鳩山政権の時、記者クラブが独占していた会見をオープンにした。
    それゆえ2010年の国境なき記者団による「報道自由度ランキング」で世界11位という栄誉(?)に輝く

   ということは、記者クラブがあっても会見をオープンにすればいいのかな??? 
   が、ことはそう単純ではないらしい。舞台を観て・・・・理解できるはず・・・!

2018年 安倍政権下では、オープンなし(?)。故に「報道自由度ランキング」67位!!!  最悪状態
     

 いろいろ学ばせてもらった。

演技やテンポをさらに磨いて上質な舞台表現になるよう期待する

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