井上理恵の演劇時評

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zoom RSS 青年団「日本文学盛衰史」(高橋源一郎原作、平田オリザ台本・演出)

<<   作成日時 : 2018/07/06 20:50   >>

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平田オリザの新作「日本文学盛衰史」を観た(2018年7月5日吉祥寺シアター マチネ)

 久しぶりの青年団の舞台であった。
「静かな演劇」という呼称を振られた平田演劇は、「騒々しい演劇」に変化してきたようだ。
「通夜の場」の四回の繰返し、最後に登場するお偉いさん(各場でことなる)で締める場の展開、
これにはいささか飽きが来る。
三回が限度ではないか・・・・・?

 当日配布されたパンフに二頁にわたって引かれている参考文献(特に高橋源一郎・岡田利規・関川夏央らへの謝辞がある)は、文学係論文作成時の如く。
台本(未見)とは別に、次には平田版日本文学盛衰史が誕生するのかもしれない!

 舞台は4場とエピローグによって構成されている。
舞台奥に障子、その前に廊下、その手前が通夜のお清めがおこなわれる日本間。
2場4場で障子が開き庭が見える風。

☆彡1場北村透谷の通夜で明治27年5月(1894年)
 大日本帝国憲法は既に22年に公布されている。
 
 登場する小説家は、森鴎外・二葉亭四迷・島崎藤村・星野天知・田山花袋・大矢正夫・幸徳秋水
 夏目漱石・国木田独歩・正岡子規・樋口一葉・相馬黒光(中村屋)・・・中江兆民

 そして喪主の北村ミナと女中たちと近所の人達(鈴木・田中・佐藤)
 場の展開は近所の人たちの〈内面て何、内面で死ぬ、小説で死ぬ…云々・・・〉の疑問符で始まり、内なる声や書き言葉と話し言葉の一致という・・・言文一致という彼らが抱える問題を二葉亭や森鷗外などで生真面目に話したり、寄り道したり茶化したり、ギャクを入れたりで話が進む。以後も同様。

21世紀風の樋口一葉が出てきて苦笑・・・終りにこの場のお偉いさん中江兆民が登場。
 基本このパターンで以後、場が進む。

田山花袋の「蒲団」の座布団の匂いを嗅ぐ行為の繰り返しも各場にあり、これもやり過ぎ感大だ!

☆彡2場、前場に存在していた野球少年正岡子規の通夜で明治35年(1902年)
 登場は、森鴎外・伊藤佐千夫・島崎藤村・田山花袋・河東碧梧桐・高浜虚子・石川啄木・国木田独歩
   幸徳秋水・与謝野晶子・後の野上弥重子・相馬黒光・・・・
  そしてロシアの二葉亭四迷の話題 夏目漱石はロンドン留学中で不在・一葉も他界。
  最後に陸羯南、子規の母と立派な妹・近所の人

☆彡3場、ロシアから帰国途上で亡くなった二葉亭四迷(長谷川辰之助)明治42年(1909年)
・・・・彼はかの演劇のバイブル・アリストテレスの詩学の初めての訳者だ!
  この時、文藝協会が始まっていた。抱月の登場
  ・・・・しかしまだ抱月と須磨子の問題は明らかになっていない・・・・
 登場は、森鴎外・田山花袋・島崎藤村・幸徳秋水・菅野スガ子・北原白秋・河東碧梧桐・島村抱月
 高村光太郎・石川啄木・若山牧水・与謝野晶子・野上弥重子・永井荷風・相馬黒光・・・夏目漱石の登場
 そして最後に池辺三山・・・長谷川辰之助の母と妻と近所の人
 

☆彡4場、夏目漱石の通夜 大正5年(1916年)12月 
  既に大逆事件で幸徳秋水・菅野スガ子は処刑されている。抱月の芸術座が大ヒット・・・・
 女の城「青踏」は廃刊、中村屋さんの芸術家支援がそろそろ始まる。ロシア革命は翌年
  
  登場は、森鴎外・島崎藤村・田山花袋・平塚らいてう・伊藤野枝・謝野晶子・野上弥重子・相馬黒光
  島村抱月・北原白秋・若山牧水・高村光太郎・永井荷風・宮澤賢治・森田草平・・・そして逍遥と鏡子夫人!

  織田作之助・坂口安吾・太宰治・芥川龍之介・川端康成・高橋源一郎・・・・エピローグ

  最後のお偉いさん役は、志賀廣太郎。森鴎外は山内健司、島崎藤村は大塚洋、田山花袋は島田曜藏

 こうしてみれば台本の構成は、好く出来ていると思ってしまうだろう・・・
 が、セリフに虚実入り混じり、演技にばらつきが多く、悪ふざけも過ぎる‥‥等々

 虚実入り混じるのは、「文学史」というタイトルにはいささか問題・・・・・
 もっともこれは高橋源一郎の原作に由来するのだが・・・・しかししかし、どうにも軽い・・・・

 エピローグで、ミラーボールが回り、ラップが始まり、文学の未来が語られるのは、
      「いかがなものか・・・・」と思った次第
循環する如くのセリフがあるが、これにも疑問を感じた。蛇足なのではないか・・・・?


 結果、これまで平田が生み出してきた舞台とは異なる騒々しい劇、拡散する舞台になった。

  平田は、新しい道を探し始めているのか・・・・・? 

しかしこの方法では、解決を生み出せないように思われる。

  次回作に期待しよう・・・・
 

 「たくさん笑って、それから少しだけしんみりしてください」(平田オリザ挨拶)という言葉も、
〈笑〉はあっても「しんみり」はない舞台であった・・・・・

 

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