宝塚星組 バウホール「音楽奇譚 龍の宮物語」(指田珠子作・演出、瀬央ゆりあ・有紗瞳・美稀千種・天寿光希・紫りら・天華えま他出演)を観る(TCAで2020年5月15日放映)

昨年、宝塚バウホールで初演された「龍の宮物語」を、TVで観た!

「遠い昔、夜叉ケ池という池で干ばつが続いた。村の長者は自らの娘を生贄として池に棲む龍神に捧げ、村には再び雨が降るようになったという……。明治中期、実業家島村家の書生・伊予部清彦は、仲間達との百物語で、夜叉ケ池の怪談話を知る。度胸試しに一人池へ向かった清彦は山賊に襲われている娘に遭遇する。清彦が娘を助けると、娘はお礼に清彦を池の奥底にある龍神の城・龍の宮(たつのみや)へ連れて行く。清彦が助けたのは、龍神の姫・玉姫であった。清彦は姫を救った恩人として丁重にもてなされ、宮殿での豪華な生活に浸りながら、姫の怪しい美しさに惹かれていった。やがて数日が過ぎ、友人達や島村家の令嬢百合子のことが恋しくなった清彦は、玉姫に地上へ帰りたいと告げるのだが……。」
(宝塚歌劇作品紹介より)

この舞台は、宝塚ファンの間で〈素晴らしい~~〉という声が多く、ファンのブログなどでは、絶賛が続いている。
従って、興味深く録画をみた。

管見の限り(あまり多くを観たわけではないが)、一つ、疑問視する意見があったのみだった。


夜叉が池は、実際に日本の福井県の南越前町と岐阜県の揖斐川町の境界に存在する池だ。

夜叉が池伝説は上に引いた雨ごいで人身御供になった娘の話が残っているし、泉鏡花が1913年に戯曲「夜叉が池」を、1914年に「海神別荘」を書いて、この伝説を有名にした。話は、異界で愛が叶うのだが・・・・

鏡花は、「天主物語」もそうだが、異界に存在する〈愛〉の絶対を表現している。それは残念ながら人間界には存在しえないものである。

指田は、この伝説に浦島太郎伝説を加えて――竜宮城を龍の宮として――悲劇を創った。

若い出演者たちに囲まれた舞台は、主演者二人も美稀も天寿もいい味を出していたし、若者たちもよく頑張っていた。
が、ドラマの構成については、指田に今後さらなる精進を望みたい。

いかんせん映像なので、舞台全体が見えないことが、残念であった。

殆ど二人の場が多く、宝塚のような大人数の場合、それをドラマの中でどう生かすかが、今後の課題だろう。

オープニングに全員を出していたが、瀬央演じる子供の頃の清彦に深く印象付けられた導入部の玉姫との出会いが、全員の登場の中で表現されているのが、のちの展開には難があるように思えた。

夏の夜のおどろおどろした百物語を、書生たちが語る場で、不必要なセリフもあり、重要な伏線が張られていず、弱い。

夜叉が池に行ってみようという興味が清彦に必然的に湧くようにするには、やはり子供の時の体験も重要なインパクトになる。

二幕で山彦に話させた具体的な夜叉が池の伝説を、一幕で匂わせなくては、どうにも劇的にならないのではないかと思われた。

柴田侑宏の「大江山」(大空祐飛で観たが、正確なタイトルは失念)の構成などが大いに参考になるのではないかと見ていて思った。

しかし、若い女性劇作家の誕生と瀬央ゆりあという、タイプの異なるスターの登場には、期待が持てる。

ファンたちが応援している95期というのは、
柚香光・礼真琴・月城かなと・瀬央ゆりあ・水美舞斗・朝美絢・桜木みなと・・・と各人の個性が全く異なり、非常に興味深い。

宝塚の座付き作者の作るドラマで、彼らが舞台で飛翔する姿が見たいものである・・・・・今後が楽しみだ